本研究は、プロデューサー型人材(創造的人材)の育成方法について日米比較を行うことを目的としている。具体的には、キャリア・キャピタル・ピラミッド(階層的キャリア・キャピタル)というプロデューサー型人材のキャリア開発の仕組みに関する概念を日米の企業人に適用し、その精緻化を図るとともに、その文化差について説明しようというものである。 これに基づき、平成25年度は日本の企業においてプロデューサー型人材を育成するために、どのようなことが障害となっているのかについての検討を徹底して行った。まず組織変革が困難な状況においては、かつては多くの企業人がキャリア・キャピタル・ピラミッドで言うところの同型的なキャリア形成に過度に集中しており、安定を重視し変化を嫌う傾向があった。ところが近年では主に若い世代の企業人の間で相対的なキャリア形成への傾倒が増えており、企業に対するコミットメントの低さが変革という困難を避けさせているようであった。 起業という側面から見たときには、相対的キャリア形成は従来から起業家に多かったが、ただその黎明期においては相対的キャリア形成に傾倒した者だけでは組織がうまく立ち上がらず、そこに創発的キャリア形成を行っている者が加わっているときに首尾よく組織生成することができるという状況が見つかった。 これらの状況は米国においてもほぼ同様ではあるが、日本とは分業環境に違いがあることを指摘できる。米国ではいったん分業した要素同士を比較的柔軟に組み替えられるのに対して、日本ではその組み替えの柔軟性が乏しくなっているようである。創発的キャリア形成を行っている者がこの組み替えを促進させる効果をもつものと想定できる。
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