「グローバル市場におけるネットワーク型の製品・サービス普及に対する最適投資戦略の立案」という本研究の目的に即し、研究最終年度である平成25年度に実施した主な内容は次の通りである。(1)各国固有の要因が普及に与える要因の解明:27か国のインターネットの普及データを用いて、経済的要因、文化的要因、人口統計的要因、地理的特性要因、国民文化的要因(個人主義or集団主義、不確実回避性向など)が普及に与える影響を統計的に明らかにし、国民文化的要因を考慮した普及戦略の重要性を示した。(2)分析対象の拡大:前年までの研究成果を踏まえ、ゲーム機や環境配慮型製品の普及に関する分析を行った。ゲーム機市場では、補完財(ソフト)の特性の変化より、ネットワーク効果が変化することを示した。(3)研究成果のまとめ:前年までの研究成果である(i)Social Networking Service(SNS)の情報流通が製品・サービスの普及に与える影響、その影響を考慮した宣伝予算の効果的な時系列配分戦略、(ii)プラットフォーム・ビジネスにおける買い手と売り手のサイド内ネットワーク効果とサイド間ネットワーク効果がビジネスの普及に与える影響、その影響を考慮した価格戦略について、更なる検討をして論文としてまとめた。 研究期間全体を通して、グローバル市場での普及戦略を立案に際して、国民文化的要因が普及に与える影響を考慮することの重要性を統計的分析により示した。また、ネットワーク型の製品・サービスが有する特性であるネットワーク外部性が普及に与える影響の大きさを計測した上で、ネットワーク外部性の大きさに応じた適切な価格戦略を示した。さらに、システムダイナミックスやマルチエージェントシステムを用いることで、様々な要因が相互に関連する普及モデルを構築し、それらのモデルを用いた効果的な宣伝予算の投資戦略や価格戦略などについてのシミュレーションを可能とした。
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