当該研究は、社会的排除問題や貧困問題などの社会的課題の解決に取り組む労働統合型社会的企業(Work Integration Social Enterprise)の組織特性を国際比較研究から分析し、日本の多様な制度に整合する労働統合型社会的企業のビジネス・モデルを構築することが目的である。 まず、労働統合型社会的企業に関する文献整理を行い、理論的研究を深めて、実証的研究に必要な調査票を作成した。調査票は、社会的排除問題や貧困問題などの社会的課題の解決や雇用創出に必要となる「事業性」に関する項目とともに、「社会性(ソーシャル・キャピタル、地域の人たちとの相互扶助・連帯、構成員の自発性の担保、働きやすい労働環境、制度[障害者自立支援制度など]に対するアドボカシー等)」に関する項目をいれて作成した。 次に、実証的研究では、作成した調査票に基づいて、国内および韓国、英国の社会的企業に訪問インタビュー調査を行った。調査終了後は、インタビュー記録を作成して、国内および韓国、英国における労働統合型社会的企業の組織特性や直面する課題を抽出して纏めることによって、労働統合型社会的企業のビジネス・モデルや必要な支援施策を検討した。 最後に、労働統合型社会的企業の1つである労働者協同組合の実践に焦点を絞り、ビジネス・モデルとしての可能性を考察して研究報告を行った。さらに、そのような社会的企業の評価手法として、事業性だけではなく、社会性にも配慮した評価基軸を提示している英国の社会的インパクト評価の現状と課題を整理し、学会報告を行った。
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