25年度は最終年度として、仮説検証のための分析作業、学会での分析結果の発表、および論文の執筆を中心に行った。 分析作業については、2000年から2002年までに中国へ進出した日本企業の現地法人について500社を超えるデータベースを作成し、それらのデータを用いて、トップマネジメント人材および他のスタッフの現地化が当該現地法人のパフォーマンス(生存率)に与える影響を統計的に分析した。その結果、トップマネジメント人材の現地化は現地法人のパフォーマンス(生存率)に影響しない一方で、他のスタッフの現地化は現地法人のパフォーマンス(生存率)に有意な影響を与えるということが明らかになった。しかしスタッフの現地化の影響は現地法人の事業内容によって異なり、製造機能を持つ現地法人の場合はスタッフの現地化がプラスの影響、製造機能を持たない現地法人の場合はスタッフの現地化がマイナスの影響を示した。 これらの分析結果を1990年代後半の中国における日本企業の現地法人についての分析結果と比較し、また中国および他の国における日本企業の現地法人に関するインタビュー等の調査結果もあわせて総合的に分析・考察を行った。その結果、たとえば先行研究でもしばしば指摘されてきたように、日本企業の海外現地法人におけるトップマネジメント人材の現地化が、依然として単に形式的なものとなっており、現地人材を現地法人トップに置いたとしても、実質的な権限の委譲は行われず、したがって現地化を行っても現地法人のパフォーマンスが必ずしも改善しないということが示唆された。 上記の分析結果をふまえて、トップマネジメントの「実質的な」現地化をどのように行うべきか、またどのような場合にスタッフの現地化を行うべきかということについて、海外での研究発表を行い、その内容をベースとして海外の学会誌に論文を投稿した。
|