研究課題/領域番号 |
23730373
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
三木 朋乃 立教大学, 経営学部, 助教 (60508604)
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的は、地球環境配慮型のイノベーションはどのようにして実現するか、資源動員という観点から分析することである。本研究では、イノベーションを1)技術開発を行う過程と、2)開発した技術をもとに事業化を行う過程とに分けてとらえている。もともとの研究目的では、イノベーションのうち、とりわけ後者の事業化過程における資源動員プロセスを取り扱うことを掲げていた。なぜなら、そこに日本企業が抱えている問題があると考えていたからである。しかしながら、調査を進めるにはやはり技術に関する深い理解が不可欠で技術開発段階に関して調べる必要があること、また日本企業が抱える問題は事業化そのものというよりは事業化の前段階にあることが明らかになりつつある。 そこで、本年度の調査は、技術開発段階を中心に行った。本年度は、昨年度とは異なる産業を対象とすることとし、環境配慮型ガソリンビジネス以外の産業において地球環境配慮型のビジネスを行っている日本企業へのインタビュー調査を行った。具体的には、地熱発電のためのタービンを製造している三菱重工業へのインタビュー調査を行った。その結果、世界的な競争力を持つ地熱発電用タービンの技術的特徴、および地熱発電用タービンビジネスが抱える問題について明らかにすることができた。 また、本年度の実績としては、昨年度の調査結果を論文としてまとめたこともあげられる。昨年度は、環境配慮型ガソリンビジネスを対象として調査を行った。具体的には、サルファーフリーガソリンを開発したJX日鉱日石エネルギー社へのインタビューを行い、研究開発から事業化に至るプロセスを明らかにした。本年度はこの調査結果の中から、とりわけ環境規制の存在と企業の競争優位構築の関係性について注目し、研究成果として論文にまとめた。この研究成果は国際学会にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れていると判断する理由は、二つあげられる。いずれも調査に関するものである。 1つ目は、技術開発段階の調査に留まっているからである。「研究実績の概要」にて触れたように、本研究のもともとの研究目的では、イノベーションのうち、とりわけ後者の事業化過程における資源動員プロセスを取り扱うことを掲げていた。しかしながら、調査を進めるには技術および技術開発に関する深い理解が不可欠であり技術開発段階に関して調べる必要があること、また日本企業が抱える問題は事業化の前段階にあることが分かってきた。よって、技術開発段階の調査に絞ることとした。ただし、研究全体に与える影響はそれほど大きくないと考える。 2つ目は、主に日本企業のみの調査に留まっているからである。もともとの研究目的としては、日本企業が抱えている問題を明らかにするために、海外企業との比較調査を行うことを掲げていた。海外企業との比較調査を行うことは望ましいが、調査対象をやみくもに広げることは、必ずしもいい調査結果を残すとは限らないだろう。まずは日本企業に関する調査を丹念に行うことが、研究目的の達成につながると考える。 以上の2点の理由から、本研究はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
1.調査について 引き続き、日本企業が素材や基礎技術に関しては高い世界的シェアを持つビジネスをとりあげて、比較調査を行うこととする。調査対象とするのは、環境配慮形ガソリンビジネス、海水淡水化ビジネス、地熱発電ビジネスである。なぜ高いシェアを構築することができたのか、なぜ高い技術力があるにもかかわらず環境配慮型ビジネス全体における存在感があまりないのか。その理由を明らかにするため、該当ビジネスを日本・および海外で展開している日本企業に対して調査を行う。調査方法は、まず新聞や雑誌を利用して二次情報を収集した後、聞き取り調査によって一次情報を得ることとする。 2.研究成果について 昨年度、および本年度の調査結果をとりまとめ、論文を作成し、国内外の学術雑誌へ投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は、論文を英訳を自身で行ったため、計上していた翻訳代が繰越金(約30万)となった。繰越金は、H25年分とまとめて、次のように使用計画予定である。 ・H24年度の調査結果の外部への発信・・・H24年度の調査結果をまとめて、海外の学会にて発表したり、学術雑誌へ投稿するため、英訳の費用を計上する。学会発表するための旅費と参加費も必要である。具体的には次のような学会への研究成果の発信を検討している。(1)学会発表(Euro-Asia Management Studies Association)(2)学術雑誌への投稿(Academy of Management, Organization Studies, 組織科学など) ・H25年度の調査・・・H24年度は、調査対象として環境配慮形ガソリンビジネス、海水淡水化ビジネス、地熱発電ビジネスをとりあげる。中でも環境配慮型技術において高い世界的シェアを持つ日本企業にインタビュー調査を行っていく。調査のため、国内出張が発生する。調査後はインタビュー内容のテープ起こしが必要となるため、テープ起こし費用も計上する。
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