研究課題/領域番号 |
23730373
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
三木 朋乃 立教大学, 経営学部, 助教 (60508604)
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キーワード | 国際情報交換 / 日本:中国 |
研究概要 |
本研究の目的は地球環境配慮型のイノベーションはどのようにして実現するか、資源動員という観点から分析することにある。 本年度は前年度までに行ってきた既存研究のまとめ、および調査を踏まえて、日本企業が素材や基盤技術に関しては高い世界的シェアをもつビジネスとして海水淡水化ビジネスを取り上げて、海外との比較調査を行った。 具体的には浄水膜の製造を手掛けている日本企業と中国企業との比較調査を行った。その結果、比較的高い技術力を必要とせずに製造できる浄水膜(MF膜、UF膜)に関しては、中国企業も多くが参入をしており、安価な膜を製造しつつあることが分かった。一方で、海水淡水化のためのRO膜に関しては、高機能、高性能が要求され、高い技術力が必要なため、中国企業は参入しづらく、依然として日本企業が競争優位を保っていることが明らかとなった。 この調査結果から、ハイエンドの環境技術に関しては日本企業は世界的な競争優位をもっており、それが事業の競争優位につながっていることが導きだされる。一方で、高い技術力を必要とされないような環境技術に関しては中国のような新興国が台頭しており、価格の面で競争優位を保ちにくい構造になっていることが導き出される。このような傾向は、環境技術に限らず、その他の産業(家電、半導体など)においても散見される現象であり、環境技術に関して日本企業が抱える課題は日本企業が抱える課題に等しいことが示唆される。 本年度の研究成果は、国内学会やシンポジウムにて発表したり、また研究成果をまとめた論文は海外の学術雑誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れていると判断する理由は、次の2点による。 一つ目は、調査についてである。本年度は水ビジネスに焦点を絞り、すでに調査していた日本企業への調査との比較を行うために、浄水膜製造にかかわる中国企業への調査を行った。ただし、調査先の都合により、現地調査は行えず、メールを通した調査のみとなった。現地調査を行うことで、より重要な情報が得られたであろう。 二つ目は、研究成果に関してである。本年度の調査結果より、環境技術に関して日本企業が抱えている問題は、そのほかの産業にもあてはまることが分かってきた。これにより、既存研究レビューの位置づけも変わってくるし、研究成果のまとめ方の方向性について今一度整理が必要であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1、調査について 引き続き、水ビジネスに関して日中の比較調査を続けたい。中国企業については、膜製造企業のみならず、エンジニアリング会社や水ビジネスのコンサルティング会社に調査を行い、業界全体に関する調査を行う。 2、研究成果について 昨年度、および本年度の研究成果をとりまとめて論文化を行い、国内外の学術雑誌への投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は海外企業への調査の実現が年度末になったこと、また現地調査が実現しなかったために、成果を発表するために予定していた学会旅費と、現地調査のために予定していた旅費が繰越金(約70万)となった。 次年度については、次のように使用計画予定である。 ・調査…H26年度は、日本企業との比較として海外企業の調査を行う。事前の業界調査をして、図書費を計上する。また、海外企業への調査のために、旅費を計上する。また、調査後はインタビューの内容のテープ起こしが必要なため、テープ起こし費用も計上する。 ・研究成果の外部発信…調査結果をまとめて国内外の学会や、学術雑誌への投稿するため、論文英訳の費用を計上する。また、学会発表をするための旅費と参加費を計上する。具体的には次のような学会への参加、投稿を予定している。(1)学会発表(EAMSA)(2)学術雑誌への投稿(AMJ、SMJ、組織科学)
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