本研究の目的は、地球環境配慮型のイノベーションはどのようにして実現するか、資源動員という観点から分析することにあった。本年度は最終年度であり、事例研究と既存研究のレビューの補完を行った。 既存研究は、CSRの観点から企業のイノベーションについて分析された研究についてとりまとめた。CSRに関する研究はまだ萌芽的であり、理論的な研究が多く、実証研究がほとんど行われていないことがわかった。 事例研究は、自動車に関する調査を行った。自動車ビジネスにおいては、日本企業はハイブリッド車に加え、ガソリン車の燃費改良技術を開発したり、新たなエネルギーとして水素を使った自動車も販売された。こうした日本の環境配慮型の自動車は、海外でも普及しており、競争優位を築いていることがわかった。前年度まで対象としていた水ビジネスに関しては、日本企業は優れた水処理膜という素材技術を持っているにもかかわらず、水ビジネス全体としてはエンジニアリング市場のほうが圧倒的に大きく、日本企業の存在感は小さいという特徴があった。こうした違いは、インフラ関連であるか消費財であるかという点にあるだろう。前年度までは地球環境配慮型技術としてインフラ関連のものにのみ注力してきたが、実際には消費財のものもある。日本企業は環境配慮型技術の事業化のための資源動員が苦手だとひとくくりにすることはできず、産業の違い、製品アーキテクチャやビジネスアーキテクチャの違いが、こうした地球環境配慮型技術のイノベーション成否に影響を与えていることが示唆された。 本年度の研究から、地球環境配慮型のイノベーション研究は、既存のイノベーション研究との関係の中で議論をしていく必要性、および製品アーキテクチャの視点も取り入れたさらなる研究の必要性が明らかとなった。
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