研究課題/領域番号 |
23730374
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
高橋 俊一 立正大学, 経営学部, 講師 (00547896)
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キーワード | 知識移転 / 多国籍企業 / 地域統括拠点 / 吸収能力 |
研究概要 |
当該年度は、昨年度に引き続き、多国籍企業内部の知識移転における吸収能力概念の一般化に際しての調査を実施した。 知識移転に関する研究は、経営学、または多国籍企業研究のみならず、多くの研究では、知識の送り手と受け手の間の一対の知識移転経路に焦点が絞られている。しかしながら、これまでの研究代表者の調査から明らかになったことは、とりわけ本国本社から海外子会社への知識移転においては、実際には地域統括拠点を経由する、つまり移転の媒介者が存在するケースが多いということである。しかも地域統括拠点を経て移転する知識は、移転が円滑に進まない、つまり、地域統括拠点が海外子会社における知識の吸収能力を阻害する要因になっている場合がある、という示唆を主に海外子会社における聞き取り調査で得ている。その背景としては、特に本社からの地理的差異や文化的差異によって、地域統括拠点の持つ権限が、海外子会社における吸収能力に何らかの影響を及ぼしている、。 したがって、当該年度は、地域統括会社およびその海外子会社を一つのセットとしたヒアリング調査を実施し、本社から移転される知識の海外子会社における吸収能力に、地域統括会社の知識移転活動はどのように影響しているのか、本当に地域統括拠点は移転の阻害要因となっているのかについて、グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいた調査を実施した。対象は、アジアおよび欧州に所在する日本企業である。調査は年度末に行ったので、その分析は現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多国籍企業の関わる知識移転の経路は多様であることから、当初の交付申請書においては、移転経路の調査対象もより多様である必要性、さらには、多国籍企業の本社国籍数を増やして調査する必要性を説明した上で、より多くの移転経路とより多くの本社国籍数を対象とした研究を実施する、と表明した。 しかしながら、「研究実績の概要」で述べたように、研究代表者がこれまで取り組んできた移転経路である、「本社から海外子会社」への知識移転経路においては、媒介組織たる地域統括拠点が存在することから、媒介組織が知識の受け手の組織の吸収能力に与える影響に取り組む必要性に迫られ、さらには、本研究に類似した先行研究における調査方法は、主に質的調査が多い為、調査方法も変更した。したがって、進捗状況が当初の交付申請書通りに進んでいると言い切ることは出来ないが、地域統括拠点を含んだ移転経路を対象とすることは、多様な移転経路を対象としていると言えるので、おおむね順調に進展している、と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては、媒介組織たる地域統括拠点が関わる知識移転のうち、当初から取り組んでいる本社から海外子会社への移転経路に関して、地域統括拠点および海外子会社を対象とした聞き取り調査を複数企業を対象として複数回実施した。平成25年度は、より多くの国籍の企業を対象とする、という当初の目的に沿う為、研究協力者の協力可能性の状況に応じて、複数の国籍の企業の本社、地域統括拠点あるいは海外子会社において聞き取り調査を実施する平成24年度までに実施した聞き取り調査の内容のコーディング等は既に実施しているが、本年度の調査分も併せて、本年度中に、グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいた、仮説設定の為のデータ解析および理論構築を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)旅費:聞き取り調査を実施するにあたって必要とする。特に、研究代表者が実施する、日本企業の海外拠点(地域統括拠点および海外子会社)を対象とした調査においては必須である。なお、研究代表者が、海外企業の地域統括拠点および海外子会社を対象とした調査をする場合は、旅費を効率的に使用する目的から、それらが日本に所在すること(日本国内での調査)を前提とする。また、平成24年度の調査研究成果を学会で報告する為の旅費にも充当する。 (2)人件費、謝金:聞き取り調査の内容を解析するにあたって知識を持つ研究者からの指導あるいは協力が必要となる。ま た、海外企業を対象とした調査を行う際は、研究協力者の協力可能性の状況に応じて、謝金を支出する。 (3)物品費:グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいたデータ解析作業および理論構築を行う際に必要となる専用のソフトウェア(Atlas.ti等)を購入する(平成24年度に購入する予定だったが、旅費に充当したため、未購入である)。また、データ解析作業のために知識を必要とするのでそのための図書費にも充当する。
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