本研究の第一義的な目的は、知識移転の困難性を示す概念の一つである「吸収能力」に影響を与える外部要因として、研究代表者が新たに提示した「送り手における『フィードバック吸収能力』」概念の一般化可能性を探索することであった。すなわち、より多様な属性の多国籍企業、より多くの移転経路を対象とした事例の比較から、フィードバック吸収能力と吸収能力との相関関係とそれに影響を与える要因の共通点や相違点を見出すことが目的であった。平成24年度は、地域統括会社およびその海外子会社を一つのセットとしたヒアリング調査を実施し、本社から移転される知識の海外子会社における吸収能力に、地域統括会社の知識移転活動はどのように影響しているのかについて調査を実施し、多国籍企業学会東部部会(2013年6月8日)および、Association of Japanese Business Studies Annual Conference(2013年7月4日)にて報告を行った。また、その調査結果は、立正経営論集第49巻2号に掲載された。 本年度における調査内容は、これまで通り、より多くの属性の企業、より多くの知識移転経路を対象とした事例を収集すべく、中小企業の海外拠点における知識移転活動を調査することで、上掲の通り「フィードバック吸収能力」概念の一般化可能性を探索した。また、海外拠点だけでなくそれらの現地取引先も対象としたヒアリング調査を実施した。この調査によって、内部知識移転だけでなく、海外拠点⇔海外拠点のステークホルダー間の知識移転に関する事例を収集することができた。これらの成果は、日本経営学会第88回全国大会(申込済)、およびEuro-Asia Management Studies Association (EAMSA) 31st Annual Conference(申込予定)にて報告の予定である。
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