近年,景気の悪化により従業員のリストラを行ったり,正社員として雇用するための新規採用者数を絞り込む企業が増加の傾向にある.採用は企業の人的資源の構成を決めるものであり,その企業の労働力の質と量を決定する.人材採用管理は企業活動の中核を構成し,かつ,中・長期の経営計画の遂行において非常に重要なファクターである.しかしながら,このような状況下においても企業が人材を採用しても,2~3年で退職してしまうという若手社員の早期退職が問題になっている.その理由としては,本人の希望・やりがいと実際の会社における仕事のミスマッチや,社内における人間関係などがあげられる.そこで人材を採用する側である企業としては,いかに早期退職しない人材を採用するかということが必要とされている.一般に企業が人材を採用する際には主に,能力や徳(人間性)を重視して採用活動を行っている.能力では,学歴や各分野に対する能力,徳では協調性,リーダーシップ,コミュニケーション能力,創造性などがあげられる.そこで本研究では,能力や徳に着目しパフォーマンスとの関係を明らかにした.具体的には,まず能力とパフォーマンスの関係を明らかにするため,多重知能理論を採用し,因子分析を用いることにより人間の能力の構造を明らかにした.第1因子から順に,内省的知能,論理・音楽的知能,企画・フィードバック・可視化能力,空間的知能,身体運動的知能,対人的知能,環境・自然理解能力,理系能力が得られた.また360度評価項目に用いられているパフォーマンス指標との関係性としては,対人的知能と高い関係性があることが得られた.また,能力と徳のパフォーマンスとの関係性を共分散構造分析した結果,管理職に求められるようなチームとしてメンバーを引っ張っていくような人徳より,その人が持ちうる能力のほうが直接的にパフォーマンスに影響を与えていることが見受けられた.
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