研究課題/領域番号 |
23730380
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研究機関 | 東京富士大学 |
研究代表者 |
篠崎 香織 東京富士大学, 経営学部, 准教授 (50362017)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 成長戦略 |
研究概要 |
平成23年度は、合併・買収関連の文献レビューと、文部科学省科学技術政策研究所が平成21年度に実施した「民間企業の研究活動に関する調査」から得られたデータを使った分析を行った。分析の内容は、2006年1月から2008年12月までの間に合併および買収を実施した企業について、実施の目的別にその後の研究開発部門の状況を把握するというものである。 合併・買収は、企業の成長戦略の1つのオプションとして実施されるが、研究開発力の強化や技術力の向上を狙ったケースもあれば、既存事業の補完、業務効率の向上、企業規模の拡大など、直接的には研究開発活動と関連しない目的で実施されるケースも多い。 合併・買収後に企業にもたらされる影響に注目した先行研究は、経営成果や、研究開発費および研究開発集約度の増減に注目したものがほとんどである。そこでは、合併・買収の目的は考慮されておらず、また、合併・買収実施に伴う研究開発部門の変化を捉えるといったことも行われていない。こうした状況を踏まえ、本研究では上記のような分析を行った。 その結果、研究開発力の強化や技術力の向上を目的に合併・買収を行った企業とそうでない企業とでは、研究開発部門における選択と集中のペースが大きく異なることが明らかになった。また、研究開発力の強化や技術力の向上以外の目的で合併・買収した企業については、実施後2年も経つと特定分野のプロジェクトが立ち上がる、あるいは新しい研究開発部門が設置されるなどの変化がみられる事実が発見された。こうした実態を把握することで、合併・買収後の研究開発部門における課題が明らかになり、とるべき対策についての検討が可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
未使用金額:690,746円 文献レビューから分析枠組みをたてるところに時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度末から分析に取りかかり、部分的ではあるが、その結果をまとめた原稿が9月に出版される書籍に掲載される。これを契機に、平成21年度「民間企業の研究活動に関する調査」のデータ分析については、順次進め学会発表を行っていく予定である。分析については、つぎのようにやるべきことを明確にしておく。 (1)2006年1月から2008年12月までの間に合併・買収を実施した企業についてのさらなる分析、(2)合併・買収を実施していない企業の分析および、合併・買収実施企業との比較、(3)(1)合併・買収を研究開発力の強化などの目的で実施した企業、(2)合併・買収を研究開発力の強化などの目的以外で実施した企業、(3)合併・買収を実施していない企業、この3つのグループについての研究開発活動および市場状況、財務状況の変化などについての分析。これらの分析を行うとともに、今年度は、現在分析中の合併および買収実施企業について、財務データや研究開発に関わるデータを入手し(データベースを購入予定)、調査データとマージさせさらに分析を進めていく。また、ここ数年の合併・買収の実施の有無について調べる。 学会発表を通して参加者からの意見を聞く機会をもつ、また関連の研究を行っている研究者に積極的に意見を求める等を通して、研究の推進を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、合併・買収を実施した経験のある企業について、合併・買収実施後から近年までの財務データおよび、研究開発に関わるデータ(データベース)を購入する(約30万円)。また、当該企業について、近年合併・買収の実施があったかについて把握するために、それが可能になるデータも購入することを予定している(約30万円)。 積極的に学会発表や有識者への訪問を通じて研究を進めるとともに、次年度開催される国際学会に参加するための準備を行うため、出張費(約10万円)および英文校閲費(約15万円)を計上する。 研究環境を整備するために、ノートパソコンおよびICレコーダーの購入(約20万円)、および文献、論文を揃えるために図書費・文献複写のための印刷費を計上する(10万円)。
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