研究概要 |
NPO法人(HIVと人権・情報センター)と認定NPO法人(アジア日本相互交流センターICAN)に対して資金援助を行っている寄付者及び会員932名を対象としてアンケート調査を行い、11%の回答を得ることができた。その結果として、非営利組織の寄付者や会員が意識的には団体の活動内容に注目し、寄付金収入を確保することを重視しているにもかかわらず、実際に財務情報を見る時には事業収入が大きかったり、管理費割合が低い団体を寄付先として選定するという矛盾した傾向が明らかとなった。 アンケートの回答率は高くなかったが、非営利組織の財務情報について具体的な数値を用いて寄付者等の選好を明らかにする研究は、日本ではこれまで取り組まれていなかったため、学会発表などにおいても大きな関心を得ることができた。 さらに引き続いて、潜在的寄付者である一般市民3,000人を対象として、同様のアンケート票を用いてインターネット調査を実施し、実際に資金援助を行っている寄付者等との相違を分析した。その結果、一般市民も寄付者等と同様に事業収入や事業費割合の高さを重視する傾向が明らかとなったが、一般市民は実際の寄付者等とは異なり、団体の活動内容よりも財務情報そのものを厳格に評価する傾向が認められた。 これらの研究成果は、学会や研究会での報告を通じて現場実務者にもフィードバックされており、今後、非営利組織の具体的な情報公開に生かされることが期待される。さらに、国際学会でも報告することによって、諸外国の研究者からも日本の非営利組織の情報公開に対する取り組みについて、高い関心を持ってもらうことができた。 なお、これらの研究結果をまとめた論文を日本NPO学会の『ノンプロフィットレビュー』に投稿し、査読が終了して掲載が決定した。また、平成25年度科研費研究成果公開促進費(学術図書)の内定が得られたため、単行本にも成果を所収する。
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