研究課題/領域番号 |
23730385
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
山崎 喜代宏 中京大学, 経営学部, 講師 (40551750)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 製品開発 / 製品コンセプト |
研究概要 |
本研究の第一の目的は、先行研究において解明されてこなかった製品コンセプトの変動メカニズムに関する論理を構築することである。単一事例の事例分析を複数行うことにより、ドミナントデザイン形成以降に、企業がどのように製品コンセプトを変動させるのか、そのメカニズムを探索的に構築していくことであった。 第二の目的は、一企業が複数産業で製品開発を行い、各産業でドミナントデザイン形成以降にユニークな製品コンセプトを継続的に設定できる場合、どのように製品コンセプトを変動させていくのか、そのパターンと、そのパターンが生まれるロジックを解明することである。 本年度(平成23年度)は、特に第一の研究目的に沿って研究を行った。「研究実施計画」通り、カシオ計算機の事例研究の充実を図った。商品企画担当者や開発者のインタビューに関連する資料や製品発表のプレス資料などの新たな資料を入手し、より精緻な分析を行うことができた。 製品開発プロセスの分析では、特に主要な製品機能の割り切りに焦点を当てて分析を行った。そこでは、当初意図しなかった他の製品機能の増強・拡張が結果として、主たる製品機能の割り切りを行わざるを得なくなるという逆説的なメカニズムがはたらいていることが明らかになった。 先行研究では、コスト削減のために製品機能の割り切りが行われることは議論されてきた。それに対し、本研究では製品機能の割り切りの目的が、コスト削減を目的とするものではなく、他の機能を増強するために行われ、そのコインの表裏の現象として、発現するメカニズムであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記した「研究の目的」に照らし合わせて、研究期間1年目としての本年度の達成度は、3割ほどであると考える。本研究は3年間をかけて行う計画を立てているが、そのなかでは順当な達成度と考える。 本年度の研究では、2つ掲げた研究目的のうち、一つの研究目的を達成するために行われた。その結果、新たな理論的知見を得ることができたと考えている。そのため、実施の進捗具合としては、3割程度と評価できる。 ただし、まだ研究目的のもうひとつは手つかずのままで、研究成果の発表も今回明らかにした研究結果の一部を行ったにすぎない。今後も研究を継続して行わなければならないため、道半ばという評価と考える。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実施計画」通り、平成24年度、平成25年度の研究を推進していく予定である。 平成24年度は、もう一つの研究目的である一企業が複数産業で製品開発を行い、各産業でドミナントデザイン形成以降にユニークな製品コンセプトを継続的に設定できる場合、どのように製品コンセプトを変動させていくのか、そのパターンと、そのパターンが生まれるロジックを解明しようと考えている。平成23年度の研究において、既存製品とは異なる製品コンセプトの創出メカニズムを明らかにしたので、平成24年度は、その研究を基にして、それを経時的に追うことで、そのコンセプトの変動プロセスを分析することにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、平成23年度に行った研究の成果を学会等で発表するための学会参加費に使用したい。経営学における日本のプレゼンスを高めるため、海外学会での発表をメインに行っていく予定である。本研究は、日本企業を研究対象として行ったものであり、海外の研究者から見れば未知の部分が少なからずあるはずである。したがって、日本企業を分析した本研究を紹介することにより、海外研究者に興味を持ってもらい、一層日本企業を分析対象に加えた研究が行われるように喚起したい。加えて、海外からの目から本研究を批評してもらうことで、世界水準の研究にするための意見を受けたいと考えている。 また、調査のために研究費を使っていきたい。平成24年度は、製品コンセプトの変動のパターンを詳細に分析していく予定である。そのため、それに必要な資料の収集や訪問インタビュー調査を行う。これを実施するために研究費を使用したいと考えている。
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