研究課題/領域番号 |
23730385
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
山崎 喜代宏 中京大学, 経営学部, 准教授 (40551750)
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キーワード | 製品コンセプト |
研究概要 |
本研究の第一の目的は、先行研究において解明されてこなかった製品コンセプトの変動メカニズムに関する論理を構築することである。 本年度(平成24年度)は、第一に製品コンセプトの変動メカニズムを解明するために不可欠な理論的バックグラウンドの整理を行った。先行研究において、特にイノベーション研究の分野では、価値次元の転換に関しての研究が1980年代から行われてきた。したがって、1980年代から現在に至るまでの、価値次元転換に関する研究のレビューを行った。そのなかで、研究が進むにつれて、捉えられる価値次元が単一次元から複数次元へと変化していくことが分かった。また、意図的に価値次元を転換させることで、製品・サービスが競争優位を構築することも明らかになった。 そして、事例分析も昨年度に引き続き行った。以前の研究で明らかになってきた意図しなかった他の製品機能の増強・拡張が結果として、主たる製品機能の割り切りを行わざるを得なくなるという逆説的なメカニズムをより精緻に、そしてその主張を増強するために、他の事例研究も行っている。任天堂は、玩具・家庭用ゲーム機を創業以来一貫して企画・開発しているが、そのなかで製品コンセプトを複数回転換している。本年度は、その開発の歴史を調べ、その背後にあるメカニズムについて考察を行った。その結果、開発の過程では、表面上の製品スペックは追わず、任天堂が過去の経験のなかで形成してきたスキームが存在し、それに照らし合わせた上で、ゲーム機の開発を行っていることが明らかになってきた。これまで任天堂に関する研究は複数あるが、創業からを研究スパンとしてみる歴史分析を行った研究はなく、本研究ではそれを実行し、そこから知見を得ることができたことは有意義だと考えている。 また、海外の研究者との共同研究も行っている。本研究課題の近接分野でのオープンイノベーションに関しての論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記した「研究の目的」に照らし合わせて、研究期間2年目としての本年度の達成度は、6割ほどであると考える。本研究は3年間をかけて行う計画を立てているが、そのなかでは順当な達成度と考える。 本年度の研究では、2つ掲げた研究目的のうち、第一の研究目的について、昨年度の研究で基礎部分はできてきた。それに加え、本年度は、その研究目的に沿った形での先行研究の検討を充実させることができた。 また、第二の研究目的に関して、本年度から本格的に取り組みだし、論理の枠組みが見えてきたところである。このまま事例研究を続けていくことで、第二の研究目的が達成することができると考えている。 以上から、これまでの研究実施の進捗具合としては、6割程度と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実施計画」通り、平成25年度の研究を推進していく予定である。 平成23年度の研究において、第一の研究目的である既存製品とは異なる製品コンセプトの創出メカニズムを明らかにした。そして、平成24年度は、平成23年度の研究を理論的に位置づけるための先行研究の検討を行った。また、各産業でドミナントデザイン形成以降にユニークな製品コンセプトを継続的に設定できる場合、どのように製品コンセプトを変動させていくのか、そのパターンと、そのパターンが生まれるロジックを解明してきた。 平成25年度では、これまでの研究をさらに発展させる形で研究を進めていきたい。特に、経時的に追う歴史分析の有用性が本研究テーマに合致していることが分かったので、長いスパンで企業を考察することで、製品コンセプトの変動プロセスを分析することにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、平成23年度、24年度に行った研究の成果を学会等で発表するための学会参加費に使用したい。経営学における日本のプレゼンスを高めるため、海外学会での発表をメインに行っていく予定である。本研究は、日本企業を研究対象として行ったものであり、海外の研究者から見れば未知の部分が少なからずあるはずである。したがって、日本企業を分析した本研究を紹介することにより、海外研究者に興味を持ってもらい、一層日本企業を分析対象に加えた研究が行われるように喚起したい。加えて、海外からの目から本研究を批評してもらうことで、世界水準の研究にするための意見を受けたいと考えている。なお、国内出張が少なかったために、24年度の研究費の63,654円が未使用になっているが、25年度に上記の目的を達するために使用する予定である。 また、調査のために研究費を使っていきたい。平成25年度は、製品コンセプトの変動のパターンを長いスパンで分析していく予定である。そのため、それに必要な資料の収集や訪問インタビュー調査を行う。これを実施するために研究費を使用したいと考えている。
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