研究課題/領域番号 |
23730387
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
横井 克典 同志社大学, 商学部, 講師 (50547990)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 二輪車産業 / 生産システムの発展 / 市場の成熟・停滞 / 日本工場 |
研究概要 |
本年度の研究は、二輪車メーカー、部品サプライヤー、ディーラーなどに対するフィールドリサーチ及び資料収集が中心となった。調査を行ったのは、欧州5カ国(イタリア、スペイン、フランス、イギリス、ドイツ)とタイにおける日本の二輪車メーカーの現地販売法人とディーラー、イタリア・日本・タイの二輪車組立工場、日本本社、イタリア・日本のサプライヤーである。日本、タイとイタリアについては従来積み重ねてきたデータを豊富化することができ、その他の国々では新たな基礎データを収集した。調査と並行して各国の二輪車統計データを、業界新聞・団体や各国の二輪車雑誌、自動車交通局から収集・整理した。その結果、二輪車企業の生産システムの動態について以下の4点が分かってきている。 第1に、日本市場と同じく欧州5カ国においても二輪車市場が成熟・停滞しているが、そのいずれの国でも日本企業のシェア(販売量基準)は高い。この主たる理由のひとつは、現地で多様な製品ラインナップを取り揃えていることにある。第2に、日本企業はグローバルに展開した複数の工場から欧州に製品を供給することで、多様な品揃えを展開している。欧州向けの製品を生産するのは、主に3つの工場(欧州現地工場、アジア工場、日本工場)である。第3に、3つの工場はそれぞれ1機種当たりのボリュームの大きさや、要求される工程編成のレベル等が全く異なる二輪車の生産を担っている。日本工場はボリュームの小さい品種の生産を担当するが、このことによって海外現地工場では効率的なロット組みが可能となる。この点、日本工場の果たす役割は大きいと考えられる。第4に、市場の成熟・停滞への対応として、二輪車メーカーはディーラーとのより強固な関係を築こうとしている。 これらについては、すでに中間的な成果として、2011年10月に日本経営学会(於同志社大学)で研究報告を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は国内外の二輪車メーカー、サプライヤー、ディーラーへのインタビューと二次資料・データの整理・検討を計画していた。研究実績の概要で記述したが、7カ国におけるインタビュー調査と共に、それらの国々の二次資料・データを収集することができた。とりわけ、新規の海外調査先へのアポイント取得・訪問が順調に進み、欧州5カ国の実態を把握できたことで、各国を比較する際の座標軸が豊富になった。このため、当初計画に対して概ね順調に進んでいると考える。ただし、分析対象の国を欧州5カ国へと拡げたため、本研究の分析フレームワークをブラッシュアップする作業をよりいっそう進めることが必要だと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は次の2点を中心に研究を進めていく。 第1には、平成23年度に行ってきたフィールド調査で得られた情報の整理と各種統計資料の検討を進め、できるだけ多く論文や研究ノートとして公表していくことである。二輪車企業が市場の縮小・停滞に応じるために行った生産システムの発展の実像を描くには、まずは個々の市場の事例研究をまとまった形で公表することが必要である。市場(総販売台数)が同じように縮小・停滞している国でも、その中身を詳しく検討するとかなり異なる特徴がみられる。例えば、イタリアとドイツは同じく市場が縮小・停滞しているが、移動手段として二輪車を用いるイタリアと、レジャーとして二輪車を用いるドイツでは販売の主軸となる製品が全く異なる。それは日本企業と競合する企業が違うことを意味する。このように、国によって日本企業を取り巻く競争環境は大きく異なっている。したがって、各国の事例研究を成果として公表していくことが重要だと考え、現在、ディスカッションペーパーや論文を作成している。平成24年度の研究期間ではそれらの成果を公表していきたい。また、この公表化に際して、さらなる情報収集を要する場合には、追加のインタビュー調査を行う。 第2には、複数の事例研究から導出した一般的な論点や仮説を吟味する作業を実施する。この作業は平成23年度から文献レビューを通じて進めてきたが、今後も引き続き行い、分析フレームワークのさらなる先鋭化を行っていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究申請時の使用計画から以下の1点を変更し研究費を使用する。今後の研究の推進方策欄で記述したように、平成23年度の成果の公表にむけて、追加調査を行う可能性がある。そのため、物品費から50,000円を旅費に組み替える。具体的に各支出項目の費用を示すと、物品費が300,000円、旅費が770,000円、人件費・謝金が70,000円、その他が60,000円である。本研究の研究方法は主にインタビュー調査を中心に行うため、研究費全体に占める旅費の割合が大きい。このような支出は、本研究の課題に接近するために必要なものであると考えるが、これまでの研究期間と同様、調査に際して無駄な費用をかけないよう、注意を払って実施する。 なお、本研究が平成23年度から繰り越した研究費は無い。
|