今年度は当初の研究実施計画に基づいて、次の実績をおさめた。まず、日本と欧州5カ国(イタリア、フランス、イギリス、ドイツ、オランダ)における二輪車メーカー、部品サプライヤー、ディーラーに対するフィールド調査を行った。今回、新たに調査したオランダでは基礎データを収集した。その他の4カ国は、すでに情報を蓄積しており、今回の追加調査によって各国市場の特徴及び二輪車メーカーが展開している販売網の異同、製品の供給体制の変化を詳細に把握できた。ついで、各国の業界団体及び二輪車新聞・雑誌から統計データを収集・整理し、従来積み重ねてきたデータを豊富化させた。前年度からの研究を通じて以下の3点が分かった。 (1)欧州各国及び日本において、日本企業は多様な製品ラインナップを展開することで高いシェア(販売量基準)を維持している。しかし、競合企業との競争が激化しつつあり、それに応じるために、日本企業、とりわけA社は製品ラインナップをさらに多様化させる方針を採用した。この方針決定では、日本工場が培ってきた多機種・小ロット生産の能力をいかに活用するのかという要因が強く作用したと考えられる。この結果、(2)日本企業の製品供給体制は、日本工場の能力を核として、各国工場が持つ能力の違いを活用する形で編成された。さらに、(3)一部の日本企業は現地の販売網を強化し、多様な品揃えのメリットを最大限活用する方向へと進んでいる(具体的な方策は各国で異なる)。これら3点は欧米・アジア企業との競争が激しさを増している欧州市場で顕著に現れていた。 これらの成果は「研究発表」の項目で示した研究報告と論文として公表した。検討結果のうち、未だ論文として公表していない成果があるため、早急に成文化していきたい。同時に、本研究を進めることで分かってきた日本企業の方針決定と生産システムの進化の関係について体系的に分析していく予定である。
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