研究課題/領域番号 |
23730389
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
徳田 昭雄 立命館大学, 経営学部, 准教授 (60330015)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 標準化 / コンソーシアム / オープン・イノベーション / 組込みシステム / コンセンサス標準 / 協調 / AUTOSAR / FlexRay |
研究概要 |
2011年度は、コンソーシアムベースで展開される日欧の組込みシステムのイノベーションと標準化の動向を実証的に把握した。すなわち、車載組込みシステムの開発・標準化に関わる日米欧の諸コンソーシアムについて、国レベル・産業レベル・企業レベルにける連携関係を精査し、調査対象を明確化・構造化したことである。 欧州発の国際標準の多くが企業間の競争メカニズムを通じたデファクト標準という形態ではなく、企業間の協調メカニズムを通じて策定されるコンセンサス標準という形態をとっていることが明らかにされた。 AUTOSARに代表されるように、欧州ではコンセンサス標準の策定に向けてプロジェクト・ベースの様々なタイプのコンソーシアムが形成されている。そしてこのような企業間の協調メカニズムは、ASAMやFlexRay Consortiumなど他のコンソーシアムとの連携を同時に図りながら、バリュー・ネットワーク・レベルでのオープン・イノベーションを実現している。さらに、これらコンソーシアムやバリュー・ネットワーク・レベルのオープン・イノベーションは、超国家的レベルでの共同研究開発の枠組みであるFP(Framework Program)やEUREKAイニシアティブ、JTI(Joint Technology Initiative)をはじめとする超国家的レベルのオープン・イノベーションの活動と同期するように工夫されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、車載組込みシステムの標準化を目指して、日欧において形成されているコンソーシアムを分析対象にすることであった。そして、 (1)標準策定メカニズムを、コンソーシアムとその背後にある国家や地域の産業技術政策と関連づけながら、標準策定メカニズムの日欧の比較分析を行い、 (2)欧州と協調しつつも日本発の規格が国際標準の地位を獲得して、日本企業の国際競争力の向上に資するアクションプランを提示することである。 (1)(2)については成果物(徳田他編著『オープン・イノベーション・システム』晃洋書房)に示したように、ほぼ目的に到達した。 欧州に対する後追い的、あるいは防衛的にも見えてしまう日本自動車産業の標準化活動であるが、他方で新しいオープン・イノベーションの型を日本産業社会にもたらしていることも明らかにされた。すなわち、自動車産業の系列に象徴される「1対1」型のオープン・イノベーション・システムから、複数の課題提起企業と複数の課題解決企業の協働による「M対N」型のオープン・イノベーション・システムへの移行である。しかも日本型のそれは、欧州のそれとはひと味違って、垂直的協調関係の強さを活かして実際にモノを使いながら検証を重ね、コンポーネント間の相互運用性を担保し、システムとしての安全性の高いインターフェイスが策定可能な組織能力における比較優位の存在である。
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今後の研究の推進方策 |
車載組込みシステムの製品アーキテクチャは、急速にクローズド・インテグラル型からオープン・モジュラー型へと変容している。本年度は実証研究の成果に基づき、企業やコンソーシアムが製品アーキテクチャを投企的に変更していく動態的プロセスを捕捉するこのできる理論モデルを構築することである。 既存理論では、企業が製品アーキテクチャを変化させていくプロセスについては必ずしも十分に明らかにされているとは言えない。製品アーキテクチャを組織が適応すべき与件として扱われているのが実際のところである。そのため、標準を使って企業を越えて製品アーキテクチャをモジュラー化するために、組織間においてどのような相互調整が行われる必要があるのかについては十分に研究されていない。 いかにしてインターフェイスを設定してインテグラルなアーキテクチャの製品をモジュラー型へと変化させていくことができるのか?そのインターフェイスを企業を越えて広げていくにはどうしたらよいのか?その際、インターフェイスに埋め込まれる調整メカニズムはいかなる形態なのか?そのメカニズムを埋め込むために適合的な組織・組織間アーキテクチャは何か? 本年度は、製品アーキテクチャ論の検討とオープン・イノベーション論、企業間ネットワーク論、組織論の知見を融合して、既存の製品アーキテクチャ論を補強する動態的理論モデルの提示を試みる。 実証研究については、引き続き欧州の動向をフォローアップする。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査研究旅費:実証研究については、研究計画書通り、欧州のコンソーシアムの主宰するカンファレンスへの参加とヒアリング調査、日本のコンソーシアムが主宰する報告会への参加とヒアリング調査を実施する予定である。 理論研究に必要な文献・資料の購入・複写、文献収集のための調査費用にも研究費を活用していく。
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