研究課題/領域番号 |
23730391
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
佐藤 彰彦 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (10434789)
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キーワード | 国際経営 / 多国籍企業 / 立地論 / アジア地域 / ヨーロッパ / 世界最適立地 / 繊維・アパレル |
研究概要 |
本年度の研究実績は、次の3点である。 1.ケンブリッジ大学・アジア中東研究学部(英国)への研究留学:日本や中国、韓国などのアジア研究を行うケンブリッジ大学・アジア中東研究学部に平成24年9月から1年間研究留学を行っている(現在継続中)。各学部で行われるセミナーの議論に参加し、欧米の研究者のアジア諸国への視点(歴史認識、文化理解)を理解することで同じアジアの日本からだけではない欧米の広い視点を取り入れることができた。これにより、立地主体である日本の多国籍企業の受け皿としてのアジア地域の立地環境についての理解を深める研究を行うことができている。また、同大学の附属図書館には書籍やデータなどの膨大な所蔵がある。ここで国際経営、経済地理関係の英文ジャーナルの最新の研究動向、日本企業関係のデータベースで日々の企業動向の把握を行っている。 2.繊維・アパレル産業の本場、欧州諸国での実態調査の実施:研究を進める中で、日本企業の繊維・アパレル企業の海外立地には、低コスト労働力の追求と主要市場への近接性という大きな2つの要素があることがわかってきた(これに第三の要素として世界の繊維貿易制度枠組み)。近年成長著しい欧米のSPA企業をみても、コスト削減と利潤追求のためにグローバルな規模で世界最適立地を行う企業が多い。そこで、これまで調査してきたアジア諸国だけでなく、欧米諸国へ訪問・調査などに出る必要が生まれ、これらの国へ赴いて調査を実施している。 3.日本の多国籍企業に関する大規模データの未取得分の発見と取得:研究課題を遂行する上で、日本企業の海外子会社動向の把握にはカバー率の高いデータが必要であり、これまで継続的に東洋経済新報社の海外子会社データを購入・利用してきている。特に、CDROM版は検索性などの面から研究に不可欠だが、販売元の東洋経済新報社に未取得年度の在庫があることが判明し取得している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、立地主体である日本の多国籍企業の受け皿としてのアジア地域の立地環境についての理解(歴史認識、文化理解)を深める研究が実施できた。具体的には、留学期間を利用して世界から研究者が集うケンブリッジ大学・アジア中東研究学部でのセミナー参加を通じた研究や、大学附属図書館・施設での書籍・データなど資料の収集である。また、本研究の対象産業である繊維・アパレル産業にとっての欧州諸国は、ファッションの本場であるだけでなく、大きな市場である。特に、留学先のイギリスは繊維産業による産業革命の歴史があるとともに、ロンドンはニューヨークと並ぶ世界のファッションの中心地であり、市場である。さらに、日本の繊維・アパレル企業が目指すフランス、イタリア、スペインといった本場の欧州繊維・アパレル諸国が地理的にも近く研究上の必要性を感じため、貴重な機会に産業の現地調査を実施できている。 このようにケンブリッジ大学における研究や(アジア諸国だけでなく)英国や欧米諸国に対象地域を広げた海外調査と資料収集の実施ができたことが大きな研究の成果である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は前期中は留学中であるため、前年度に引き続きケンブリッジ大学での研究と欧州諸国調査を継続する。その上で、これまでに行ってきたタイ、ラオス、ベトナムといったアジア諸国、イギリスをはじめとする欧州諸国における海外調査の結果分析、並びに収集した資料・データの分析を行い、研究の総括を実施する。これに加えて、必要に応じて追加的な海外調査や日本国内での調査、資料収集を実施する。また、これらの成果については、日本の国内学会や雑誌、海外の学会や雑誌への投稿・報告など、様々な形でのアウトプットを実施していきたい。 こうした研究調査により、日本の多国籍企業のアジア地域における立地のプロセスとその論理を追求するとともに、受け皿としてのアジア地域についての知見を深め、アジア地域の発展との相互作用の中で成長する日本の多国籍企業の姿に迫りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
ケンブリッジ大学での調査・資料収集、欧州諸国への海外調査、日本国内の調査と資料の収集、学会・雑誌等へのアウトプット等を行う。
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