研究課題
本研究の目的は、自治体の認定するマイスター(優秀技能者)の認定制度の有効性と、認定されたマイスターの技能形成のプロセスを明らかにする点にあった。自治体マイスター制度について、自治体担当者にインタビューを実施するとともに、マイスターに認定されている技能者についても、そのキャリアと技能伝承のプロセスについて、インタビュー調査を実施した。自治体マイスター制度の有効性については、当初の予想よりも制度自体を導入する自治体が多かったこと、そして先行事例となる制度をうまく活用し、より有効な制度作りが為されていたことが発見であった。少数でも継続的に技能者を認定し、また若手技能者を積極的に認定することにより、当初の目的である技能尊重の機運醸成や、技能者の地位・社会的認知度の向上などをより効果的に促進することを狙っていた。他方で技能伝承活動は、非常に活発に実施している自治体がある一方、あまり実施されない自治体もあった。それは業界団体での活動が中心となっていたり、自治体として積極的に実施する資金的裏付けが不足していることが主な原因であった。マイスターの技能形成については、マイスターへのインタビューにより、その技能が仕事の中でたゆまぬ向上心に裏付けられた創意工夫によって形成されていることがわかった。また技能伝承よりも「盗む」といった形で積極的な観察学習が大きな役割を果たしていることも明らかになった。そのことが翻って、現代において伝達活動を重視するあまり、学習者に観察して盗むという学習活動が不足していることを示唆している。本研究から技能伝承について、それを保有する技能者のコミュニティ(実践共同体)の形成と、それを母体とした技能伝承活動の必要性が指摘できる。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (3件) 図書 (2件)
関西学院大学商学研究会『商学論究』
巻: 第59巻第4号 ページ: 73-100
DOI:http://hdl.handle.net/10236/8810
巻: 第59巻第2号 ページ: 85-109
http://hdl.handle.net/10236/8433
巻: 第60巻第1,2号 ページ: 163-202
http://hdl.handle.net/10236/10403