研究課題/領域番号 |
23730400
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
林 靖人 信州大学, 産学官連携推進本部, 研究員 (60534815)
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キーワード | 地域ブランド / 適合方略 / 連合方略 |
研究概要 |
24年度は「地名(地域ブランド)と資源名の概念的なつながり(例:信州-りんご)と購買行動の関係性」を測定するため、「『DRMパラダイム』を応用して地域ブランドにおける地域-製品間の概念の結合状況を測定する手法の開発を行った。 DRMパラダイムは、一般に心理学分野において虚記憶の実験的検討に用いられる手法である。実験では、参加者がある地域に関する資源リスト(例:じゃがいも・流氷・旭川・・・+ダミー語等の12語程度)を学習した後、記憶保持を阻害する妨害課題を実施し、再度資源リストを見せられ事前に学習した語かどうかを判断する再認課題を行った。 再認課題は4種類の単語で構成されており、[1]事前学習と同一語(例:じゃがいも)[2]事前学習で非表示の地域名(北海道) [3]事前学習で非表示の関連地域資源(例:メロン)[4]事前学習で非表示の低意味関連語(例:バナナ(果物カテゴリ))、[5]無関連語(例:新潟)であった。 実験仮説として無関連語([5])に対して見たという判断が行われず、非表示の地域名([2])が誤って高確率で想起(虚記憶)されれば、我々は地名を起点として地域資源との間に強い概念的結合を有しており、さらに事前学習で非表示の他の地域資源([3])が想起されれば、地名の虚記憶想起と共に関連領域へと活性化が波及していた判断できると予測した。 実験結果は、仮説を裏付けるものであり、事前学習時に非表示であった地域ブランド名を誤って想起する者が多く見られ、非表示の関連地域資源に対しても誤って見たと回答する割合が一定量みられた。一方、無関連語での虚記憶はほとんど見られなかった。このことから我々は地域ブランドに対して地名を起点とする集約型のネットワークを有しており、関連の低い地域資源等を新たにブランドのネットワークに取り入れるかどうかは概念の親和性や典型性が重要となる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、地域ブランドの認知情報処理として①地域名と製品の「概念連合(結び付き)」を利用する方略と②地域名と製品の「概念適合(典型性)」を利用する方略について、購買判断に与える影響を検討するものである。また、その際に主観的な確信度が両手法の選択に対してどのような影響を与えるのかを検討することも目的としている。 23年度(初年度)は、本研究課題を明らかにするための研究手法の探索的な検討を行い、潜在概念連合テスト(IAT)や感情誤帰属手続き(AMP)、DRMパラダイムなど概念連合を測定する心理学実験手法を中心に検討した結果、DRMパラダイムが有効な手法となる可能性を確認した。 24年度(中間年度)は、DRMパラダイムを用いた実験を開始し、地域名と製品名の連合と適合の状況について検討を行った。概ね検討に必要な範囲は実験済みではあるが、実験過程において生じた回答者属性による「ひいき効果」などの検証を加える必要が生じているため、被験者の追加や実験刺激等を変更して25年度に実験を追加することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
25年度(最終年度)は、実験の最終目的として、これら地域名と製品名のつながりが地域ブランドの購買行動に対してどのような影響を与えるのかを検討することになる。既に全国自治体の展開するアンテナショップ調査は開始しており、今後は共同研究等で協力を頂いている自治体のアンテナショップ等と協力し、来店者等への調査やインタビューを行い、理論知の有効性を検証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査データの取得にあたり、当初外部モニターを利用する予定であったが、関連企業や自治地体等の協力により確保できたため、次年度使用額が生じた。 ただし、24年度の研究結果から県外調査モニターを確保する必要があるため、今年度調査において前年度繰り越し額を利用し、追加調査を実施する。
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