本研究は、地域ブランドの購買場面における2つのステレオタイプ的認知について心理学的実験手法を用いて検証することであった。 平成23年度の研究1では、地域と商品の概念同士の適合の良さ(例:信州とリンゴの概念の親和性)を消費判断に活用するとした「マッチング仮説」を検証した。「感情誤帰属手続き」を用いて検討した結果、高知名度の地域名の付与は判断速度を高める一方で、低知名度の地域名の付与は安心感等の判断時間を遅延させることが示された。ただし、知名度の高低と商品のポジ/ネガ判断には明確な差が得られなかった。 平成24年度の研究2では、地域と商品の概念の連合強度(例:信州-リンゴという概念の確立)を消費判断に活用するとした「アソシエーション仮説」を検証した。虚(誤)記憶研究で用いられる「DRMパラダイム」を応用して検討した結果、高い認知度を有している地域ブランド商品は地域-商品に明確な概念の結合が存在しており、これが商品に対する信頼感や安心感を確信させることにつながることが示された。 平成25年度の研究3では、実際のアンテナショップでの購買場面を通じて2つの方略に関する消費者の内省を調査した。その結果、訪問経験や居住の縁故など地域に対する関与があり、対象の購買や消費経験がある者ほど「アソシエーション仮説」を用いる傾向が伺えた。ただし、消費者が正しい連合に関して正確な知識や豊富な知識を持っているかどうかは別問題であることも示された。またよりローカルな地域ブランドについては上位の地域名の影響があることも示され、今後それらの関係性を検討する必要性・手法の開発が課題として示された。 また、本研究成果を用いた発展研究として、原発事故や疫病等による風評被害について消費者の認知メカニズムを明らかにする研究に着手することも可能になった。
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