本研究の当初計画は3年間(平成23~25年度)で、ブランドの使用・所有行動を通じて消費者が自分らしさを表現し認識するプロセスを明らかにすること、そこから、自己表現にブランドを活用する消費者特性を測るための尺度を開発することが目標であった。いわゆるブランド力を捉える視点の尺度は比較的多いが、ブランドの使用・所有行動から消費者特性を捉えるようとする視点が本研究の特徴である。 当初計画からの本研究の主要な内容は以下のとおりである。(1)本研究に関連する文献レビュー(ブランド論でのブランドの価値構造・機能に関する研究、消費者行動における自己(self)研究、象徴的消費、顕示的消費など)、(2)尺度開発のための文献レビューと、適用する分析手法の検討、(3)尺度開発の予備調査として、定性調査の複数回の実施、(4)定性データに対して適用するテキストマイニングおよび探索的分析手法の検討と実施、(5)上記を基にした、消費者行動における自己表現に関する概念モデル・枠組みのブラッシュアップ、(6)定量調査の実施と、定量分析を通じた尺度の開発であった。しかしながら、想定していた以上に各ステップに時間がかかり1年間延長した。特に(3)および(4)の実施過程において、自己表現の「行動」と「心理」の両側面の整理が不充分であるという問題認識が生じたためである そこで、平成26年度の前半は上記(3)および(4)を中心に(1)~(5)の各段階の再検討および再整理を慎重に行い、後半は本研究の仕上げともいうべき(6)の作業に従事した。(6)においては、ブランドの使用・所有といった自己表現の行動面に焦点を絞った尺度の開発を行い、定量的にそれらの信頼性および妥当性の検証を行った。
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