研究課題/領域番号 |
23730406
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
坂下 玄哲 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 准教授 (00384157)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 商学 / ブランド / 消費者行動 |
研究概要 |
本研究は、小売店舗のブランドイメージ形成がいかなる要因によって引き起こされ、同時に、それが消費者の購買意思決定過程にどのような影響を与えるかについて、特に消費者の認知構造における連想ネットワークという視点から、理論的、かつ実証的に検討を加えることを目的としている。上記の目的を受け、平成23年度においては、主に3つの研究活動を行った。第一に、文献調査において研究に必要な資料や文献の収集を行い、関連分野における研究蓄積に対する包括的かつ詳細なレビューを行った。具体的には、特に小売研究やブランド研究における店舗選択行動やストア・ロイヤルティ、ストア・イメージ、ブランド連想に関する一般的な文献を収集・精読し、キー概念の抽出とそれらの相対的関連について整理した。その上で、得られた知見に対しては専門家との意見交換などを行い、研究枠組みの精緻化を試みた。第二に、国内外における商業集積における小売店(特に百貨店など)に出向き、実際の店頭に露出した消費者の視点からいかなる知識構造が形成し得るかに関する経験調査を行った。同時に、小売店における一般消費者の購買意思決定プロセスを観察し、彼らの意思決定に影響を与える要因、および、それら要因によってもたらされる購買行動の変化について、情報収集を行った。第三に、学生、および主婦を対象としたインタビュー調査を行い、特に彼らが行う購買意思決定における様々なコミュニケーションメディア(たとえば雑誌やテレビなどのマス媒体や、SNSや口コミサイトなどのインターネット媒体など)の活用実態や、露出した情報の処理のしかた、また、情報源に対する信頼性の形成実態などに関する情報を収集した。そこから、特定の店舗に対するイメージがどのように形成されるかに関するいくつかの知見を得た。以上の研究活動の一部について、学術雑誌などにおいて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の掲げた目的を達成するために行った研究活動であるが、初年度に実施予定であった項目については、おおむね順調に進めることができている。具体的には、(1)文献調査による関連研究の整理、および研究枠組みの精緻化、(2)商業集積における小売店での経験調査、および観察調査の実施、最後に(3)一般消費者を対象としたインタビュー調査の実施、以上の3つである。ただし、2011年3月11日に起こった東日本大震災への対応のため、研究費の支給額が減額となる可能性がある旨の通知を受け、いくつかの研究活動を止む無く取りやめたため、研究の進捗状況は完璧であるとは言い難い。具体的に取りやめた項目には、上記(2)における小売店舗での経験調査・観察調査の実施、および(3)における調査協力者の一部割愛が含まれる。以上から、研究目的の達成度は「おおむね順調に進展している」とした。しかしながら、平成23年度に取りやめた研究活動は、研究目的を達成するために実施予定であった数多くの項目の一部分であり、他の項目と補完関係にあるものであった。したがって、研究目的達成という視点からは、研究全体の遂行に大きな支障をきたすものではないことを付記しておく。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、基本的には当初の研究計画に沿って引き続き実施してゆく予定である。すなわち、初年度に引き続き文献調査、インタビュー調査、商業集積における経験調査や観察調査を追加的に実施し、本研究におけるキー概念の抽出とその理論的位置づけを更に明確とする作業を遂行する。その上で、RBI(Retail Brand Image)の形成過程への影響要因、およびRBIによる消費者購買意思決定局面へのインパクト要因を抽出し、それらの要因とキー概念との関係について考察する。先の「現在までの達成度」の項目において既に説明した通り、やむを得ぬ事情から初年度の研究活動において一部実施できなかった項目については、平成24年度中での実施を目指している。詳しくは事項で説明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
先の「現在までの達成度」の項目において既に説明したように、平成23年度の研究活動においては、東日本大震災への対応から研究費の支給額が減額となる可能性がある旨の通知を受け、いくつかの研究活動を止む無く取り止めた経緯がある。具体的には、商業集積における小売店舗での経験調査および観察調査の一部の延期、および、一般消費者を対象としたインタビュー調査における調査協力者の一部割愛などである。これらの取りやめられた項目については、平成24年度中において追加的に行うことを予定している。具体的には、実際の小売店舗における経験調査および観察調査については、平成24年度中にこれを追加的に行う予定である。また、一部取りやめられたインタビュー調査についても、同様に追加的な実施を予定している。そのために、必要に応じて研究補助者としてのアルバイトの追加的な雇用なども視野に入れている。しかしながら、上記の追加的な処置については、当初の研究計画から大きく逸脱したものでないことを付記しておく。すなわち、本研究の当初の研究計画においては、大きく(1)調査仮説抽出のための研究活動、および(2)抽出された調査仮説を検証するための研究活動という、2つの研究ステージが設定されていた。そして、平成23年度および平成24年度の2カ年においては上記ステージの第一段階の達成が、そして、平成25年度においては第二段階の達成が主に目指されていた。したがって、平成23年度と平成24年度における研究活動はオーバーラップする部分が多く、今回追加的に実施する予定の項目についても当初の研究計画に合致する内容である。
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