研究課題/領域番号 |
23730406
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
坂下 玄哲 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 准教授 (00384157)
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キーワード | 商学 / ブランド / 消費者行動 |
研究概要 |
本研究は、小売店舗のブランドイメージ形成がいかなる要因によって引き起こされ、同時に、それが消費者の購買意思決定過程にどのような影響を与えるかについて、特に消費者の認知構造における連想ネットワークという視点から、理論的、かつ実証的に検討を加え ることを目的としている。 上記の目的を受け、平成23年度の研究活動に引き続き、平成24年度においては、主に以下の三つの研究活動を行った。第一に、これまで実施した文献レビューでの発見事項をもとに枠組みの精緻化を試み、研究に必要な概念の追加的抽出、関連概念についての更なる文献レビューを行った。具体的には、店舗選択行動を含む消費者の購買意思決定における感情の役割と、消費者が有する目的志向性との関連に焦点を当てた研究蓄積を中心に文献を精査した。また、具体的な尺度や方法論に関する知見も精査対象とした。 第二に、国内外における商業集積での小売店舗について、アクセス、価格とプロモーション、雰囲気(物理的要素、環境的要素、社会的要素)、カテゴリ内品揃え、カテゴリ間品揃えといった項目について、実際の店頭を参照しつつ情報を取集した。同時に、それらの店舗における消費者の購買行動について理解することを目的として、経験調査、および観察調査を平成23年度に引き続いて行った。 第三に、先の文献レビューでの発見事項をベースに、具体的な理論仮説の構築を試みた。その際、抽出された仮説の外的妥当性、内的妥当性、構成概念妥当性を高めるために、先に行った実際の商業集積における店頭調査からの発見事項の内容と照らし合わせながら、仮説の洗練化を試みた。同時に、平成23年度に行われたインタビュー調査によって収集されたデータについて、異なる視点からの質的分析を再度加えつつ、仮説の妥当性について検討した。なお、これらの研究活動においては、関連分野の専門家からの意見収集を積極的に行うよう努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の掲げた目的を達成するために行った研究活動であるが、平成24年度に実施予定であった項目については、おおむね順調に進めることができている。具体的には、①関連文献に対する追加的なレビューによる研究枠組みの整理、②商業集積における小売店での経験調査、および観察調査の実施、最後に③上記①②をベースとした理論仮説の構築、以上の3つである。特に、平成23年度における東日本大震災への対応から実施を見送った②については、その遅れを取り戻すべく集中的に取り組んだ。 しかしながら、①については、当初想定していた研究枠組みとは異なった、新たな構成概念について追加的にレビューしたため(主に、意思決定における感情の役割に関する研究蓄積からの知見がこれに該当する)、結果として②③についても新しい枠組みによる研究活動を修正的に行うことを余儀なくされた。したがって、特に③については、最終的に検証すべき理論仮説を再度入念に検討することとなった。その結果として、研究枠組みの精緻化、および理論仮説の抽出作業に若干の遅れを生じることとなった。以上から、研究目的の達成度は「おおむね順調に進展している」とした。 しかしながら、研究内容を修正し、より包括的な枠組みによる研究推進を行うことは、当初の研究目的にも掲げていた点であり、その点において、研究全体の遂行を大きく妨げるものではないことを付記しておく。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、基本的には当初の研究計画に沿って引き続き実施してゆく予定である。具体的な内容としては、平成23年度、平成24年度において検討された研究枠組みのさらなる精緻化、および、抽出された理論仮説の検証を予定している。 しかしながら、先の項でも述べたとおり、平成24年度における研究枠組みの拡張によって、検証すべき理論仮説の抽出作業に若干の遅れが生じている。この点を鑑み、仮説検証以前の、より広い視座からの研究枠組みの抽出作業を重点的に行う予定である。詳細については事項で説明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究活動においては、平成23年度における東日本大震災への対応を受け、見送られていた商業集積における小売店舗での経験調査および観察調査について重点的に行った。その中で、消費者の小売店舗における購買意思決定、および、小売店舗そのものの選択行動は、彼らの中に派生する感情によって大きな影響を受けることが発見された。この点を受け、その後、更なる文献レビューと収集された定性データの再分析を通じて、研究枠組みの修正を行った。 これらの経緯を受け、平成25年度においては、引き続き研究枠組みの修正、および精緻化を進める予定である。具体的には、これまで収集された文献や定性データの精査、また、必要に応じて追加文献を収集する予定である。また、研究枠組みの妥当性を高めることを目的として、商業集積における店頭調査(一般消費者の購買行動の観察調査、および、店頭における経験調査)を追加的に行う。同時に、関連分野の専門家に対して、積極的に意見収集を試みる予定である。 なお、当初の研究計画においては、抽出された理論仮説の検証作業を予定していた。しかしながら、ここまでの記述からも明らかなように、研究遂行を通じて新たな枠組み構築の必要性が生じている。この点を受け、仮説検証作業よりも、より妥当性の高い理論仮説の抽出作業を優先的に行うこととした。したがって、研究費の使途についても、この点を重点的にカバーしたものとなる予定である。
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