研究課題/領域番号 |
23730407
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
中野 香織 駒澤大学, 経営学部, 准教授 (20434269)
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キーワード | 商学 / マーケティング / 広告 / マーケティング・コミュニケーション / クロスメディア / 符号化変動性仮説 / 相乗効果 / メディア |
研究概要 |
本研究では、複数メディアによる相乗効果の生じるメカニズムを検証する。取り組むべき課題は二つである。(1)「符号化変動性仮説」が説明する記憶促進のメカニズムを検証すること、(2)「符号化変動性仮説」に基づく情報処理プロセスモデルを検討することである。 なお、妊娠、出産のため、研究計画を変更した。産前産後の休暇および育児休業の取得に伴い、平成24年12月10日から平成26年3月15日までの予定で研究を中断する。 本年度は課題(2)について取り組んだ。本課題においては、それぞれのメディア接触段階ごとの効果を細かく見る必要がある。さらに平成23年度の成果として、最初に接するメディアによって、その後に接するメディアへの広告態度形成に影響を与える「順序効果」の存在がわかっている。そこで、各メディアへの広告態度を高める先行要因を細かく検討、特定することが重要であるため、先行要因の一つとして「メディア・エンゲージメント」の概念に注目した。 メディア・エンゲージメントとは、メディアに対する「オーディエンスの心理的な短時間の引きつけ効果(石崎2009)」のことである。過去に行った共同研究では、新聞および雑誌のメディア・エンゲージメントが高いビークルやコンテンツに広告を露出すると、広告態度、ブランド態度、購買意図が高まることを明らかにしている。 本研究ではウェブサイトも対象としているため、同様の効果が生じるかについて検証した。その結果、ウェブサイトに対するエンゲージメントも広告態度やブランド態度を高めることが確認された。その成果は2012月7月の日本ダイレクトマーケティング学会にて発表した(中野・松本・五十嵐・石崎2012)。 今後は、複数メディアを組み合わせた場合の情報処理プロセスにおいて、接触メディアの広告態度ごとに先行要因としてメディア・エンゲージメントを取り入れ、モデル構築を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書では平成23年~24年度にかけて、課題(1)「符号化変動性仮説」が説明する記憶促進のメカニズムの検証、について取り組む予定であった。符号化変動性仮説によれば、符号化の手がかりが多いと記憶されやすいという。手がかりの水準は、文脈的成素、構造的成素、記述的成素に構造化されている(Glenberg 1977;1979)。広告メディアに応用すると、メディアの種類が多い方が複雑で記憶されやすいと考えられるため、相乗効果が生じるメカニズムの一つを明らかにする予定である。具体的なステップは、文献研究、予備調査、および本調査である。主要な文献の収集およびレビューについては平成23年度に行っている。予備調査および本調査については、昨年の「研究実施状況報告書」において計画を変更した。平成25年度に取り組む予定であった、課題(2)「符号化変動性仮説」に基づく情報処理プロセスモデルの検討も行いつつ、平成24年度に予備調査を行う予定であった。 しかし、本年度に妊娠、出産を経たため、研究計画を変更した。産前産後の休暇および育児休業の取得に伴い、平成24年12月10日から平成26年3月15日までの予定で研究を中断し、2年間の期間延長を行いたいと考えている。そこで、平成26年度に課題(1)の予備調査と本調査を実施したい。合わせて、課題(2)の情報処理プロセスモデルの変数についても検討する予定である。 本年度は、課題(2)の予備調査に向けた変数の検討を行った。具体的には、情報処理プロセスモデルにおいて、各メディアへの広告態度を高める先行要因を細かく検討した。その結果、先行要因としてのメディア・エンゲージメント概念の可能性が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に妊娠、出産を経たため、研究計画を変更した。産前産後の休暇および育児休業の取得に伴い、平成24年12月10日から平成26年3月15日までの予定で研究を中断し、2年間の期間延長を行いたいと考えている。そこで、平成26年度に課題(1)の予備調査と本調査を実施したい。合わせて、課題(2)の情報処理プロセスモデルについても検討する予定である。 まずは、文献研究をもとにして、実験の手続き、手がかりの水準による効果の違いなどを広告メディアに応用し、予備調査を実施する。予備調査は、学生20名×4グループ(合計80名)を対象に行う。単一メディア提示グループ、複数メディア提示グループ(3パターン)と、手がかりの水準を操作して広告再生を測定する。中野・松本 (2011)からメディア接触の順序効果の存在が明らかとなったため、複数メディア提示の場合は、接触順序も考慮したい。 調査用の広告は、既存の製品では事前知識によるバイアスが生じるため、未知の製品を素材とする。そのため、テレビCMは地方限定もしくは海外のCMを加工して用いる。印刷広告は当該CMの一部をもとに制作する。ウェブサイトはそれらを素材としてダミーのウェブサイトを制作する。製品カテゴリーは現在検討中である。中野(2008)では焼酎を用いて30代の被験者を対象としたが、本研究における被験者は学生を予定しているため、学生に馴染みのある製品カテゴリーにする予定である。 本調査は、予備調査の分析結果をもとに実験方法の修正を行い、学生30名×4グループ(合計120名)を対象に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はほとんどが研究中断期間に該当するため、使用計画はない。
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