近年、宿泊施設やレストラン等のサービスにおいてみられる、価格決定権を完全に消費者に委ねる価格設定方法(Pay-What-You-Wantプライシング)について、消費者行動論の観点から参照価格概念を用いて理論的考察を行い、「価格を決めない価格戦略 : 『ペイ・ワット・ユー・ウォント』方式に関する考察」として論文にまとめた(日本マーケティング協会『マーケティング・ジャーナル』第126号に掲載。)今後、実証研究によって、検証を行う予定である。 また、内的に様々な参照価格を保持し、かつ様々な外的参照価格に露出される消費者が、購買時にどの参照価格を利用するのかに関してウェブ調査を行った。具体的には、有形財9カテゴリー(携帯電話、ノートパソコン、冷蔵庫、薄型テレビ、ランニングシューズ、シャンプー、スナック菓子、ヨーグルト、ジーンズ)、無形財4カテゴリー(国内線航空券、国内宿泊施設、フィットネスクラブ、プロ野球観戦)の計13の製品カテゴリーについて行った(被験者数は有形財は各カテゴリー206名、無形財は各カテゴリー155名ずつ)。ブランドレベル、カテゴリーレベルそれぞれ15種類の参照価格を提示し、回答者が購買時に使用する参照価格と、各参照価格の重要度について7段階で回答してもらった。(調査対象カテゴリーの選定には、先行研究において採用された製品カテゴリーを勘案した。)現在、収集したデータの分析段階であり、今後、国内外での学会報告と学会誌への論文投稿を行う予定である。 製品知識、価格意識、製品関与、購買関与などの消費者特性と合わせて調査した点、多様な製品カテゴリーに関して調査した点において、本研究の貢献は大きいと考えられる。本研究の結果を踏まえて、当初の研究計画において予定していた製品カテゴリーの特徴や消費者特性を考慮した、効果的な価格提示方法に関する実証研究を今後進めていく予定である。
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