研究課題/領域番号 |
23730415
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高橋 啓 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (70595280)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | マーケティング / 心理的効果 / 離散選択モデル |
研究概要 |
当該年度は,多くのマーケティング・サイエンス分野の選択モデルにおいて仮定される効用最大化と矛盾する現象とされる「効果」について,マーケティング・サイエンス分野の選択モデルの改良により,ある種効用最大化と矛盾せず,複数の効果が同時に生起することを示した.具体的には,Generalized Nested Logit Model(GNL) という効用最大化と整合的なモデルを用い,ある特定のネスティング構造のもとで,類似効果,魅力効果,妥協効果という代表的な心理的効果が,同一の構造で表現可能であることを示した.このことは,GNLの妥当性を消費者心理学の面より裏付けることとなる.また,GNLを用いてこれらの心理的効果がどのような条件で,どのくらい表現できるのか,その条件を明らかにした.具体的には,以下のとおりである:・消費者がある潜在的なクラスに属すと考え,そのクラスが3つ以上ないと,これら全ての効果は表現できない,・妥協効果については,実用にかなう程度の大きさまで表現可能,・魅力効果については,表現可能であるものの,その大きさは極めて小さい.また,GNLを利用するにあたり,その基礎として,GNLモデルがもっている特性について明らかにした.GNLは,エントロピー制約付の最大化問題として捉えることができ,Tversky and Simonson(1992)でいうところのVM(価値最大化)モデルであることを明らかにした.このことはTversky and Simonson(1992)の指摘を覆すこととなる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に当該年度は研究が進展した.これは主に理論面で多くの知見が得られたことが大きい.当該年度は,研究計画の第一段階であり理論的側面である,マーケティング・サイエンス分野の選択モデルにおいて仮定される効用最大化と矛盾する現象とされる「効果」について,マーケティング・サイエンス分野の選択モデルの改良により,ある種効用最大化と矛盾せず,複数の効果が同時に生起することを明らかにした.上記の事実以外に,次年度GNLを実証に用いる際に重要となるモデルの基本的な性質について明らかにした.具体的には,次に示す2点である:1)GNLモデルにおける(ランダム)効用最大化はエントロピー制約付最大化問題に帰着する,2)選択肢を束ねる際に重要となる集計ルールの条件及びその具体的内容.また,これ以外に次年度行なう予定であったPOSデータの解析も発表をしていないものの行なった.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,今年度明らかになった事実をもとに,心理的効果が実際の市場で観測できるか,今年度購入したPOSデータ,次年度実行予定のアンケートにより明らかにする.今年度明らかになった事実より,GNLを用いた効果の実証では,妥協効果に的を絞り分析する.魅力効果については,GNLを用いて表現可能な大きさが小さいため,集計的な検証として,アンケート調査による擬似購買データを解析する.最後に,これらの結果を基に,GNLモデルのパラメータを様々な選択肢属性により説明する「構造化」を行なう.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は,主に実証に要するアンケート調査に用いる.具体的には,アンケートの印刷費,回収(郵送)費,配布,入力に関する人件費等である.なお,当該年度から次年度へ3万円の繰越しが発生しているが,これは当該年度に購入したPOSデータの価格が,使途限定,交渉によるディスカウント分である.
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