研究課題/領域番号 |
23730416
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
閔 庚ヒョン 早稲田大学, 商学学術院, 招聘研究員 (40508206)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 非合理的購買行動 / 環境的要因 / 消費感性 / 非指向性感情状態 |
研究概要 |
本研究は消費者の非合理的購買行動に関して、既存の認知理論や合理的観点からの説明に加え、購買行動の選択手続きにおいて決定的役割を果たす購買態度と共に、態度が最終的な購買行動につながる過程に関する時系列的分析を行うことで、行動主体の論理性の欠落した購買行動の全容を把握するための評価モデルを提示することを目的としている。 本年度は次年度実施予定の模擬店舗実験に向けて必要機材の確保及び先行研究の情報に基づき、実験設計の再検討と補完作業を行った。その準備作業の一環として本年度は、都内在住の20代から30代の会社員200名を対象に事前調査を行った。本調査では、属性要因と非属性要因で構成されたオプションに加え、提示された属性要因に関連する経験操作オプションの相違により発現される選択手続きの経路別変化過程と誘因評価の推移を観察した。まず、一般的認知欲求と購買傾向に関する調査では、調査対象者が合理的購買群と非合理的購買群の二つの形態に分類され、両グループが認知欲求の評価値と有意に関連していることが確認された。なお、その後の購買選択に関する調査では、価格交渉に関する肯定的経験を選択オプションとして追加した場合、一定の感情状態から活性化された消費感性が態度へ帰属される経路が発現され、属性情報の優劣関係に関わらず、成果行動に対する全体的評価値も向上されることが確認された。すなわち、一般的傾向とは異なり、属性に関連した肯定的経験オプションと非属性要因によるオプションに露出された場合、購買情報処理過程の各段階別変数に対する評価値に有意な改善効果が見られたのである。 本年度の調査結果を基に、次年度はより具体的な購買オプションが提示される模擬店舗での実験を行い、各経路間相関関係や選択手続きにおける誘因効果に関する総合的な結論を、両年度の分析結果を合わせた形で学会発表や論文等を通じて報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施した事前調査により、本研究で想定される合理的・非合理的購買情報処理モデルの統計的有意性が検証された。その分析結果では、購買態度の形成過程において、認知的評価に基づいた合理的経路とそれに影響されない非合理的経路の存在が明らかになったと同時に、属性関連の経験値に基づいた成果行動の整合性に対する自己評価が消費感性により相殺されることが検証されている。すなわち、本研究で想定していた購買情報処理モデルにおける二つの経路「期待→成果不一致→態度」と「期待→非指向性感情状態→消費感性→態度」の有意性が検証されたのに加え、属性に関連した肯定的経験オプションと非属性要因オプションによる購買情報処理過程の各段階別変数に対する評価値の改善効果が見られたことから、各経路間の相互効果の一部が実証された。本年度の事前調査は、平成24年度実施予定の模擬店舗実験の設計上において重要な理論的根拠となるものとして想定した調査であり、以上の分析結果は次年度実施予定の模擬店舗実験で想定される検証経路の有意性を十分に裏付けるものとなっている。その意味で当初の研究計画と照合すると、現時点における本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度実施した事前調査の分析結果を基に、より現実に近い購買オプションが提示される模擬店舗での行動操作実験を実施することで、合理的・非合理的購買情報処理過程の各経路間相関関係や選択手続きにおける誘因効果に関する評価モデルを見出すべく、以下の2点に関する検証を行う予定である。1.購買態度への誘因効果に関する調査の実施・分析:購買態度に影響を与える誘因操作の効果と誘因別の個別効果を検証するべく、シナリオ法による実験を行い、特定の購買状況における誘因効果の変化を時間軸の上で確認する。なお、誘因効果の測定方法としては、被験者を実験群と統制群に均等に振り分け、実験群には対象商品に関する属性情報と共に、環境的要因を施した選択オプションを与え、被験者には気づかれないよう経験単位別に分類された各項目に関するインタービューを行い、その後の態度変容の推移を「属性情報と環境的要因による影響」と「属性情報のみが与えられた場合における影響」の二つの局面から把握する予定である。2.操作誘因に対する認知率の測定:誘因に対する認知率の影響を検証するために、実験終了直後、選択型質問用紙を被験者全員に配布し、各操作誘因に対する意識の有無を自由回想方式で確認する。質問内容は「商品選択の際、合理的に正しく選択することを意識したか」「商品選択の際、操作誘因に気づいたか」「気づいていた操作誘因により、選択行動の修正を行ったか」の三点に絞ることで、属性情報と環境的要因が各要素に対する注意度の水準にいかに影響されるかを確認すると同時に、商品棚をカテゴリ別の仮想のマトリックスに振り分け、追跡観察による視線の推移を確認し、回想内容との比較分析を行う予定である。なお、次年度の分析結果は本年度の事前調査の結果と合わせ、学会発表や論文を通じて学会及び社会に向け発信していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、模擬店舗実験に参加する被験者及び実験調査員・協力者への謝礼と運営費を主な経費として使用する予定である。なお、その他に、研究に関連する参考書籍や実験室内で使用される設問調査表の制作にも一定額を割り当てる予定である。その内訳は、被験者100人(予定)と実験補助者4人への謝金及び人件費として使用される40万円と、それ以外の残金額の使用先として計画している実験の運営に必要な調査票や商品映像の印刷費、そして文房具等の消耗品代からなっている。
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