本年度は、平成23年度行った事前調査における属性評価と環境的要因の同時的影響に関する条件設定をさらに拡張させ、近似オプションと環境的要因の影響による購買行動の非合理的な側面に関する検証を行うべく、模擬店舗を想定したシナリオ法による調査を行った。その結果、「評価難易度の変化に伴われる選択行動の相違」「無意識的に発現される誘因効果」「近似オプションが購買行動に与える影響」「環境的要因の補完効果」が主たる検証項目として分析された。なお、本調査では、購買情報処理過程を説明する既存モデルをより精巧に規定するべく、購買態度から購買意図に至るまでの過程に焦点を絞り、既存モデルに修正を加えた新たな評価モデルが購買情報処理過程を把握するにおいて妥当か否かに関する検証を行った。 まず、既存の購買情報処理モデルで提示された意図の先行変数である態度の決定誘因が非指向性感情状態であるというよりは、消費感性と費用要因であることが検証された。また、意図の先行変数となるものが態度だけではなく、態度の先行変数である消費感性と費用評価でもあることに関しても検証を行った。検証の結果、既存モデルに比べ、本研究で提案した評価モデルの方が全般的な適合度が高いことが確認された。このような結果は、態度が消費感性と費用評価により決まり、消費感性は態度の媒介的役割による経路をたどっていくだけではなく、意図へ無意識的に直結される経路も存在していることを示している。すなわち、実際の購買状況において行動主体は、主に態度と価格そして消費感性から影響を受けており、行動操作を行う際に価格と共に商品と行動に関連する環境的要因を主たる操作要因として設定した方が成果行動の相違を見出すのにより有効な方法であることが明らかとなった。本調査の分析結果は類似研究や行動操作を試みる諸戦略の効果と効率性の向上に貢献するものであると考えられる。
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