研究課題/領域番号 |
23730427
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 史彦 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10329691)
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キーワード | 利益マネジメント / 実証的会計研究 / 会計的利益マネジメント / 実体的利益マネジメント / 投資家保護 / コーポレートガバナンス |
研究概要 |
本年度は,研究計画の2年目にあたり,これまでに実施してきた研究の追試的な論文を2遍,さらに関連する論文を1遍報告した.以下それぞれについて説明する.まず,「倒産企業の資金調達と会計操作」では,2000年以降の倒産企業に焦点を当てて、企業の資金調達と会計操作との関係に関する近年の傾向を解明することを目的とした.124の倒産企業の分析の結果、会計操作の背景には、企業間信用および長期借入金への依存、金融機関との関係が弱いこと、社債の発行の必要性、そして、配当の維持による企業のシグナリングがあることを示した。 次に,「管理会計研究における実証研究の特徴と課題―アーカイバルデータを用いた実証研究に焦点を当てて―」では,アーカイバルデータを用いた実証研究の特徴と課題を一般的な実証研究の枠組みに沿って概説し,管理会計研究における今後の実証研究のあり方について検討した.実証研究には多くの限界があり,それを把握しておくことが重要であること,そして,そこには,仮説設定におけるバイアス,変数を特定化する際の分析者の主観性,実証モデルの選択,検証結果の解釈の問題が含まれることを指摘した.さらに,こうした問題を解決するためには,検証手続きの精緻化,適切な統計手法の適用とともに,他の方法を用いた研究とのコラボレーションが重要となる点について言及した. 最後に,「Accrual-Based and Real Earnings Management: An International Comparison for Investor Protection」では,日本を含めた国際比較研究を通じて,投資家保護が強い国においては,経営者による会計的な利益マネジメントは抑制されるが,その一方で,実体的な利益マネジメントが実施される傾向にあることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,研究計画の2年目にあたるが,いくつかの報告機会を得ることで,関連する3篇の論文を報告することができた.これらの研究は,本研究計画の中では,予備的な研究として位置づけられるものであり,それらを論文(2本は招待論文)として公表し,多くの討論の機会を得たことは,研究目的の達成にとってアドバンテージとなった. こうしたことから,概ね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度においては,二つの研究を進める.一つは,日本を含めた国際比較研究の進展であり,もう一つは,不正会計とガバナンス構造の分析である.本年度は,計画よりも各地の学会,研究会での報告を増やすことを予定しており,昨年度から繰り越した研究費を充当する.現時点では,日本会計研究学会,日本管理会計学会フォーラムでの報告を予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定よりも,研究会,学会での報告を積極的に実施する予定であり,その旅費に充当する.
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