組織間連携のベースとなる、医療機関の単体運営の核となるべき医療管理会計のシステムが機能する要件について、医療機関の特徴である組織構成員のプロフェッショナリズムと、チーム活動に起因する相互依存性に着目して研究を行ってきた。 その結果、アカウンタビリティの共有と、従来の責任会計の想定とは異なる理論的枠組みが明らかになった。すなわち管理可能性原則の再検討である。これは、非営利である医療機関において、従来の(営利企業において生成・発展してきた)管理会計の枠組みとは異なる機能が求められていることを意味する。この点に着目することで、医療管理会計が機能する、すなわち有効なシステムとなることが可能となった。 次に、この概念レベルのシステムを、具体的な実行システムとして構築するにあたり、目標管理と方針管理に着目し、予算管理システムとの結合をはかった。次医療機関は非営利なので、働く人に予算を提示しても無意味とはいわないが、無力である。ではどうすれば医療管理会計は機能するのか。医療機関における意志疎通や意識の共有のツールとして、もっぱらBSCが挙げられている。しかし方針管理や目標管理との違いや厳密なサーベイが行われていなかった。よって方針管理と目標管理の先行研究の整理を行い、どのように予算とつなげて医療機関で有効なツールとなるのかについて明らかにした。 以上の実行システムを念頭においた目標管理と方針管理の研究について学会報告を行い(「目標管理と方針管理の同質化と相互補完性―医療機関におけるアカウンタビリティの共有化と総合管理―」)、論文にもまとめている。 また、2013年6月刊行の著書『医療管理会計―医療の質を高める管理会計の構築を目指して―』(中央経済社)は、2014年度日本原価計算研究学会・学会賞(文献賞)を受賞した。
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