研究課題/領域番号 |
23730431
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
篠原 阿紀 神戸大学, 経営学研究科, 研究員 (60582517)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マテリアルフローコスト会計 / 環境管理会計 / アクターネットワーク理論 |
研究概要 |
本研究は、環境管理会計の手法であるマテリアルフローコスト会計の企業での実践についてアクターネットワーク理論の観点から分析することで、既存の研究では見落とされていた、マテリアルフローコスト会計の実践を支える動的な変容過程を明らかにすることを目的としている。平成23年度は、分析視角であるアクターネットワーク理論やアクターネットワーク理論を用いた会計研究の先行研究のレビューと並行してマテリアルフローコスト会計の文献調査・分析と試行的なインタビュー調査を実施した。具体的には、分析視角に関して会計の変化プロセスを明らかにするにあたって、会計はそれを取り巻く関係性の中で生み出されていく一方で、その関係性の中で関係それ自体を創造していき、それによって関係自身としての会計を再構成させていく現象という関係性の変化として捉えることを明らかにした。また、マテリアルフローコスト会計については、経済産業省がマテリアルフローコスト会計をサプライチェーンに展開した事例をまとめた事例集をもとに、企業構成(資本関係や主導型)とマテリアルロスのロス率、ロス内容、ロス削減との関係性についての分析を行った。その結果、資本関係がある場合だけでなく、資本関係がない場合でもコスト情報の共有や比率での共有という形で情報共有を行い、企業間で協力してロス削減の取り組みを行っている事例のあることがわかった。次年度は分析枠組の構築と、マテリアルフローコスト会計が単独もしくはサプライチェーンを通じて実際にどのように運用されているのかについて引き続き調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、環境管理会計の手法であるマテリアルフローコスト会計の企業での実践についてアクターネットワーク理論の観点から分析することで、既存の研究では見落とされていた、マテリアルフローコスト会計の実践を支える動的な変容過程を明らかにすることにある。調査期間の3年間の目標としては、アクターネットワーク理論を用いた分析枠組を構築し、マテリアルフローコスト会計の実践についてフィールド調査を行い、分析を行うことにある。そのために平成23年度は、理論研究についてはアクターネットワーク理論やそれを分析に用いた会計研究を収集・整理・分析を行い、平成24年度も引き続き分析枠組の構築を続けていく予定である。また、経験的研究についてはフィールド調査の対象としている企業に対し平成23年度以前から実施していたインタビュー調査の内容の分析を行ったり、新たな調査対象企業の開拓を行ったりした。具体的には、これまで単独の企業で実施してきたマテリアルフローコスト会計の実践を、サプライチェーンに展開した場合にどのような特徴がみられるのかについて、マテリアルフローコスト会計に関する調査報告書の詳細な分析を行った。今後もこういった分析を行いながらフィールド調査の対象企業を開拓していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
・理論研究について:平成24年度は、平成23年度のアクターネットワーク理論に関する理論研究にもとづき、マテリアルフローコスト会計の企業への導入実践について、関係性それ自体としての会計が変化するという視点から計算概念に着目して独自の分析枠組を提示する論文を執筆する予定である(平成24年6月)。・経験的研究について:平成24年度は、平成23年度に実施したマテリアルフローコスト会計のサプライチェーンへの展開に関する文献調査・分析をもとに、本格的なインタビュー調査を開始する。また、調査結果については、国内だけでなく、平成25年7月に神戸大学で開催される会計の国際学会であるSeventh Asia Pacific Interdisciplinary Research in Accounting Conference (APIRA)での報告を目指す。・今後の研究計画について:平成24年度は上記のように研究を進めていく予定であるが、平成24年7月から平成25年3月まで産前産後休暇と育児休暇を取得する予定のため、研究計画についてその内容ではなく時間的な問題が生じる可能性が高い。その場合、調査や発表などは主に平成25年4月以降に実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、(1)分析枠組を構築するための文献レビューを行うための経費、(2)フィールド調査を行うための経費、(3)研究成果を国内外に発信するための経費、の大きく3つの経費を必要としている。まず、(1)については、環境会計や管理会計などの会計学に関する文献だけでなく、分析枠組構築に関連して社会理論に関する文献や資料を幅広く収集する必要があるため、図書購入を行う予定である。また、(2)については、主に国内でのフィールド調査を実施するための交通費や環境会計に関する研究会に参加するための交通費として使用する予定である。(3)については、平成24年度は7月以降産前産後休暇に入るため、学会での報告は困難であるが、平成25年7月に開催される国際学会での発表に向けた論文投稿のために英文翻訳校閲費用として研究費を使用する予定である。
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