本研究の目的は、「原価企画におけるサプライヤーの疲弊問題」を解決することである。その方法の一つとしてサプライヤーにも原価企画導入が求められているが進んでいない。そこで本研究では、どのような条件が整備されていれば、サプライヤーにも原価企画をスムーズに導入できるかを解明するとともに、サプライヤーへの原価企画導入が原価企画の逆機能の一つとされる「サプライヤーの疲弊」に及ぼす影響と、そこで果たす原価計算・管理会計の役割を明らかにすることを狙いとする。 この目的を達成するために、平成24年度の研究実績(サプライヤーへの原価企画導入条件の一部を明示)を踏まえ、平成25年度は、原価計算・管理会計がサプライヤーの疲弊問題を含む原価企画の逆機能問題、そしてサプライヤーへの原価企画の導入問題にどのような影響があるかを実態調査を踏まえて考察した。 その結果、会計の不可視性によって、原価計算・管理会計を経営管理や評価に利用する場合に、良くも悪くも原価企画の実施に影響を与えることが明らかになった。具体的には、会計の不可視性が存在することによって、時の経過とともに会計数値に解釈の余地が加わり始め、さらに原価計算・管理会計が制度化、習慣化されることで硬直化をもたらし、コスト低減余地が枯渇し始める中で、ゲーミングの要素が増す傾向にあるからである。そのことが、原価企画の逆機能を生じさせかねない状態を作り出していることが分かった。また、この会計の不可視性によって、原価企画対象費目の拡大を抑止し、サプライヤーへの原価企画を進めようとする試みを阻害している可能性が明らかとなった。 さらに、原価企画の逆機能問題を解決するために、人間心理にも目を向けていく必要性を確認した。
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