研究課題/領域番号 |
23730439
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研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
岡本 紀明 流通経済大学, 経済学部, 准教授 (00433566)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 公正価値会計 / 金融商品会計 / 金融危機 / 社会学 |
研究概要 |
当該年度は研究の拠点を在外研究先であるエジンバラ大学社会学研究科に移し、金融市場や金融危機を社会学的に研究しているグループ(ドナルド・マッケンジー、イエイン・ハーディー、ジェイムス=クルニー、テイラー・スピアーズ、デビッド・ヘイザリーなど)と意見交換を行い、貴重な知見が得られた。その結果、当該年度における研究実績として以下の2点を指摘したい。 第1に、公正価値会計の専門化の進展がより浮き彫りになった。現在、一部の金融商品はますます複雑化し、公正な評価額を導き出すのが困難なものが少なくない。その場合、高度なコンピューターによる計算技術や相当に専門的な知識・情報が評価に求められる。このことは、リーマンショックを中心とした金融危機の原因とも少なからず関連する。すなわち、金融危機でも一部の証券化商品の専門的情報を有していた組織などは、損失をいち早く回避できていた。なぜその知識が共有されていなかったのかは、今後の研究課題である。 さらに上記の点を、Hutchinsが提唱する分散認知の観点から考察した。金融商品が複雑化することに伴い、一部の公正価値会計が分業化することは避けられず、実際に最終的な評価や数字の導出などに関して、外部専門評価機関に依拠して行われることも多い。いわゆる公正価値会計の分散化が進んでいる。その分散の仕方がどのように行われるのか、分散に伴う各利害関係者の利害調整の問題などは、今後の研究課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画を立てた時点では、(1)公正価値会計が普及してきた制度的・政治的過程の分析、(2)批判的会計研究のレビューと本研究の分析視角の確立、(3)社会学的な視点の導入、及び(4)金融社会学の研究手法の習得と公正価値会計の適用実態に関する予備的調査を提示していた。 この中でも、特に(1)、(2)及び(3)についてはおおむね達成できたと思われるが、(4)の適用実態に関する関する予備的調査については不十分であると思われる。研究を進める中でこの目的の重要性のウェイトがやや低下したこともあるが、これはある程度の範囲で次年度に行う予定をしている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、(1)公正価値会計の適用実態に関する調査、(2)社会学的理論による裏付け、及び(3)研究成果の取り纏めを進めていく予定である。ただし、(1)に関しては研究受け入れ企業の可否の問題もあり、予定は流動的であり、変更する可能性もある。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として実態調査に関する諸経費、研究成果の取り纏めのための各種経費に研究費を使用する予定である。
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