研究課題/領域番号 |
23730441
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
村上 裕太郎 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 准教授 (30434591)
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キーワード | 税務会計 / 会計システム選択 / 価値関連性 / 税負担削減行動 |
研究概要 |
平成24年度前半は、平成23年度学会報告をしたフィードバックを論文に反映させ、投稿の準備をした。学会でのフィードバックのひとつとして、資本市場が会計利益と課税所得の両方の情報を使ってプライシングするという拡張モデルの計算がうまく解けない場合があり、その部分についての改訂を平成24年度後半時点においても継続中である。 また、研究課題の派生論文として、アグレッシブな会計システム選択行動に焦点をあてた別論文「The Interaction between Aggressive Accounting System Choices and Hidden Actions」を執筆した。この論文では、努力する優秀な経営者ほど、アグレッシブな会計システムを選択しやすいという分析結果が得られ、ヨーロッパ会計学会(スロベニア)、アジア太平洋会計学会(ハワイ)、アジア会計学会(京都)において報告を行い、討論者および聴衆から貴重なコメントをいただいた。こちらの論文も現在、投稿に向けて改訂中である。 さらに、外国人投資家の税負担(課税所得)削減行動に焦点をあてた論文「外国人投資家の存在が企業の税負担削減行動に与える影響」も執筆した。この論文は、連結財務諸表データを用いて、株式所有構造の変化、とりわけ外国人投資家による株式所有の拡大が日本企業の税負担削減行動へ与える影響について実証分析したものである。こちらの論文は、国内査読付き学術誌である「慶應経営論集」に投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、最終的に執筆した論文を国内および海外査読付き学術誌に投稿することを目的としている。その目的に照らし合わせてみると、2本の英語論文については、海外学会報告の厳しいレビューを反映させるべく継続中である。当初の予定と比較して、若干投稿が遅れ気味であるが、レビューの厳しい国際学会においても、すべてアクセプトされた論文であるため、投稿準備を入念に行っている。一方、日本語論文については国内査読付き学術誌に受理されたため、おおむね順調であると評価できる。 また、期間を通じ研究報告の場としてセミナーに積極的に参加したことによって、研究の進捗が順調となった。なぜならば、学会に比べセミナーは一般的に報告時間が長く、本研究の目的や独創性、意義についてより詳細な議論ができたからである。本研究では、セミナーは研究の意義や重要性を討論する場として、国内学会はそれらを確認する場として、さらに海外学会はそれらの国際的価値を知る場として、というように、各研究報告の場に個別の明確な目標を与えたことが、これまで順調に進展できた大きな理由であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度前半は、平成24年度に拡張した2本の英語論文について、海外査読付き学術誌に投稿する。先述したように、これら2本の論文は、査読の厳しい国際学会にすべてアクセプトされ、現在は討論者や聴衆からのコメントを論文に反映させている状況である。 平成25年度後半は、数理モデルで得られた命題について、データを用いた実証研究をする予定である。平成24年度と同様に、得られた研究成果を大学主催のセミナー(慶應義塾大学の「分析的会計研究会」や大阪学院大学の「税務行動研究会」等)、国内学会(日本会計研究学会)、および国際学会(ヨーロッパ会計学会、アメリカ会計学会、アジア太平洋会計学会、アジア会計学会)にて報告し、討論で得られた有益な情報を論文に反映させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度も平成24年度と同様に、国際学会での報告を年に数回行う予定である。すなわち、主な研究費の費目は、「セミナー報告、国内学会、および海外の学会報告のための出張旅費」と「英文校閲」であり、海外の学会は、ヨーロッパ会計学会、アメリカ会計学会、アジア太平洋会計学会、アジア会計学会への出席を予定している。 また、英文校閲については、先述した2本の英語論文を学術誌に投稿するためのものである。
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