本研究は、エコプロダクト等の売上拡大を通じて、環境保全に貢献しながら、収益の獲得を目指す考え方(環境貢献)に焦点をあて、わが国における環境貢献の普及過程を明らかにすることを目的にしている。 企業の環境経営に対する考え方は、企業が自発的に開示する報告書に反映されるとの前提に立ち、本研究においては、日本企業の環境報告書・CSR報告書を分析の対象とした(東証1部上場企業の過去20年分の環境・CSR報告書)。分析の方法としては、テキストマイニングの手法を使用し、特定のトピックに関連する用語の出現回数をカウントした。出現回数は、報告書のページ数で標準化することとし、経年、業種、企業間比較が可能になるように集計した。トピックとしては、「温暖化問題」「有害物質」「水質汚染」「廃棄物」ならびに「環境貢献」である。「環境貢献」に関連する用語としては、「エコプロダクト」「環境配慮型製品」「戦略」「共通価値」「企業価値」などを設定した。結果は、「温暖化問題」等のトピックについては、2005年ころがピークとなり、その後、減少に向かう傾向が全体としてみられたのに対し、「環境貢献」に関連する用語については、2011年まで、一貫して伸びていることが確認された。業界別に集計すると、とりわけ素材系、機械系および金融系の業界について、この傾向が顕著であった。 また、本研究では、環境貢献型のビジネスの一例として下水道整備をとりあげ、環境貢献の視点から、わが国の現状についても論じた。
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