研究課題/領域番号 |
23730455
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
浅田 拓史 大阪経済大学, 経営情報学部, 講師 (30580823)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 管理会計変化 / 知識創造 |
研究概要 |
平成23年度は企業に赴きインタビュー調査を主体とするフィールド調査を行った。調査の結果得られたデータをもとに、従来の制度的フレームワークの下で十分に説明されてこなかった管理会計のルールとルーティンとの相互作用プロセスを知識創造理論を用いてより精緻に理解することが可能となることを示した。また、管理会計変化を知識創造理論の視点から捉えることで、経済危機によって生じたかに見える管理会計変化の源泉(促進要因)が経済危機以前に培われた組織的文脈の中で生じていることが明らかとなった。このような成果を日本管理会計学会全国大会において報告するとともに、成果論文を学会誌『管理会計学』に投稿中である。またその成果である英語論文をポルトガルのリスボンで開催されたEuropean Network for Research in Organisational & Accounting Change 8th Annual Conference 2011で報告した。フィールド調査は、リサーチ・サイトの事情により必ずしも十分に実施できていない状況があるが、継続的にアクセスを試みている。 また同時に、管理会計の知識がどのように定義されてきたか、その構成要素がどのようなものであるのか、そして変化のプロセスに影響を与える要素はどのようなものか、ということについて先行研究を検討する概念的研究を継続的に行っている。本年度は、このような問題に関する先行研究のレビューを通じて、管理会計変化の対象がどのように概念的に規定されてきたかについて、主要な理論枠組みごとに検討し、概念規定の曖昧性が見られる一方で、研究対象の理解に多様性があることを示した。その成果は、日本原価計算学会全国大会において報告するとともに、学会誌『原価計算研究』に投稿し掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究において明らかにすべきことは、第一に、企業内でどのような方法・メディアによって、管理会計の知識が伝達されたか、そしてこのような伝達された知識が現場の実践を通じてどのような新しい個人的・実践的理解を生み出し、また組織的な知識へと昇華されたかを、フィールド調査をもとに明らかにすることである。このような点についてのフィールド調査は、いまだ不十分と言わざるを得ない。リサーチサイトの協力を得つつ、さらなるフィールド調査の推進が必要であると考える。 また本研究において明らかにすべき第二の点、すなわち、このような知識創造プロセスにおいて、管理会計に特殊的な要因としての計算構造がどのように変化したか、また組織的な知識に対して計算構造がどのように影響を与えたかを理解するための分析枠組みを、先行研究に基づいて発展させることは、一定程度の方向性を見出しつつある。さらなる経験的研究と概念的研究の推進が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
フィールド調査によるデータ収集が予定より遅れているため、今後も継続的にリサーチサイトへのアクセスを試みていく予定である。その他の研究計画については、交付申請書記載の通り遂行する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費が生じたのは、本年度予定していたフィールド調査がリサーチサイトの都合により十分に実施できなかったことによる。次年度以降にこれを実施したいと考えている。
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