研究課題/領域番号 |
23730456
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研究機関 | 大阪商業大学 |
研究代表者 |
矢部 孝太郎 大阪商業大学, 総合経営学部, 准教授 (20411465)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 会計学 / 企業評価 / 包括利益 / 純利益 / その他の包括利益 |
研究概要 |
本研究課題では、企業会計によって作成される会計情報を用いた企業評価において、包括利益、純利益、その他の包括利益およびその他の包括利益のリサイクリングがどのような役割を果たしているかについて、理論的、実証的に研究を行う。企業の利害関係者が、包括利益、純利益、その他の包括利益という情報をどのように利用し、意思決定を行っているかということを明らかにすることによって、また、その他の包括利益のリサイクリングの有無によって企業の利害関係者の意思決定にどのような差異が生じるかを明らかにすることによって、包括利益の報告と純利益の報告に関する会計基準研究を行う際の理論的基礎を提供することができる。また、それは、会計情報利用者の意思決定の精度を向上させ、種々の利便の向上につながる。 平成23年度は、包括利益、純利益、その他の包括利益およびリサイクリングに関する資料・文献、企業評価に関する資料・文献、関連する研究発表などから最新の情報を収集し、それらの先行研究の整理を行った。また、それを基礎にして、包括利益、純利益、その他の包括利益の数値をインプット・データとする企業評価モデルの構築を検討した。また、包括利益、純利益、その他の包括利益と企業価値の関係を分析するために数理モデルの構築を検討した。また、9月には日本会計研究学会に参加し、本研究に関連する研究報告を聴講し、最新の情報を収集した。また、1月から3月の間に、研究成果の中間とりまとめを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、国内外においても先行研究の少ない、数理モデルを用いた、会計情報と企業評価の関係に関する理論を取り扱っている。この意味で難解な部分や未整備・未整理な部分も少なくない。そのような状況において、まずは、包括利益、純利益、その他の包括利益およびその他の包括利益のリサイクリングに関する会計処理の手続きとその本質を会計関連文献を整理することでまとめた。また、企業価値評価の手法と本質を企業価値評価論の関連文献を整理することでまとめた。これらの2つを有機的に結び付けることが次の作業であり、会計計算構造を表す数式系と企業価値評価モデルの数式系を結び付けることでいくつかの数理モデルを構築した。包括利益、純利益、その他の包括利益の数値をインプット・データとする企業評価モデルの構築である。この企業評価モデルが企業の利害関係者の意思決定に適合するものであるのかを検討するための考察も必要となるが、そのために、包括利益、純利益、その他の包括利益と企業価値の関係を分析するために数理モデルの構築も行った。このように、本年度は理論的基礎の構築に重点を置いた研究を行った。ここまでは、当初の予定通りであり、研究は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度における数理モデルによる理論的研究によって得た知見を前提にして、包括利益、純利益、その他の包括利益およびリサイクリングの有用性について、統計データを用いて実証的に研究を行う。最終的に、学会発表と論文により、研究成果を公表する。4月中に、平成23年度の研究結果を踏まえ、理論の高度化のために必要と考えられる資料・文献の目録を作成し、それに基づいて資料・文献を収集する。5月中に、研究内容をより発展させるため、平成23年度の研究結果と照らし合わせながら、新たに収集した関連文献のサーベイを行い、収集した資料・文献の内容を整理、理解、把握し、また分析する。6月から7月には、平成23年度の研究における理論的考察結果であるいくつかの数理モデルを、新たに収集した資料・文献の情報をもとにして、再検討を行い、理論モデルの高度化を図る。10月から12月に、理論的考察において構築した理論モデルから、包括利益、純利益、その他の包括利益およびその他の包括利益のリサイクリングが企業評価に及ぼす影響に関する仮説を理論的に導出し、その仮説を統計データを用いて、実証的に検証する。1月から3月に、2年間における研究の全体をとりまとめ、最終報告としての論文を作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
新たに収集する、包括利益、純利益、その他の包括利益およびその他の包括利益のリサイクリングと企業評価に関する関連資料・文献を購入するために研究費を使用する。 また、理論的考察において構築した理論モデルから、包括利益、純利益、その他の包括利益およびその他の包括利益のリサイクリングが企業評価に及ぼす影響に関する仮説を理論的に導出し、その仮説を統計データを用いて、実証的に検証するために、統計処理ソフトを入手する必要があり、そのために研究費を使用する。また、その実証データを入手するために研究費を使用する。 また、最新の情報を収集するために、本研究課題に関連する研究発表のある学会等に参加するための出張に関して、研究費を使用する。 その他、研究および論文の作成において必要な物品購入や経費支出のために研究費を使用する。 なお、平成23年度中に、図書の購入および出張の費用が一定程度抑えられたため、次年度に使用する予定の研究費があるが、これは、平成24年度中に、同じ項目の支出に充てて使用することとする。
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