研究課題/領域番号 |
23730457
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
坂口 順也 関西大学, 会計研究科, 教授 (10364689)
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キーワード | 組織間関係 / TCO / 取引関連要因 / 利益 / 信頼 |
研究概要 |
平成24年度においては、まず、昨年度に実施したTCO(Total Cost of Ownership)情報に関する広範な議論の整理とその内容の検討を基礎として、会計情報が組織間(バイヤー・サプライヤー間)の利益獲得や信頼形成に与える影響に着手した。具体的には、①昨年度の文献調査に加えて、欧米における研究動向(取引の要因、取引相手の要因、文化の要因が組織間でのコントロール・システムの設計や、その後の組織間協働の実施に与える影響)にかかわる実証研究について、会計学の領域だけでなく、関連領域の研究成果も含めて調査し、次に、②これにかかわる実験室実験や、③質問票調査(東証一部上場企業を対象とした郵送質問票調査)の準備をおもに実施した。①については、昨年度の活動を継続したものであり、これまで調査したTCOに関する文献のほかに、経営戦略、マーケティングに関する研究、さらに、グローバル化する中でのコントロール・システムの設計と利用に関する研究など、豊富な内容について調査することができた。なお、①の成果の一部は、本年度において研究成果として出版している。また、②と③については、調査の準備だけでなく、その一部を先行して実施し、有益なデータを入手することに成功した。②や③については、今後さらに推進する予定である。 これに加えて、平成24年度では、海外の研究者とのミーティングを複数回にわたって実施し、研究課題全体の改善に資する示唆を獲得した。また、こうした示唆を反映した組織間コントロール・システムの利用にかかわる研究成果が、来年度以降において管理会計に関連する海外の査読付き研究雑誌に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、研究期間の中間に位置する年度であることから、平成23年度に実施したTCO情報に関する広範な議論の整理とその内容を基礎として、会計情報が組織間の利益獲得や信頼形成に与える影響の実証的な解明に着手した。まず、昨年度の文献調査に加えて、おもに欧米における研究動向について、管理会計を中心とする会計学の領域だけでなく、経営戦略、マーケティング、グローバル経営などの関連領域の研究も含めて調査した。その結果、コントロール・システムの設計や利用について幅広い知見を蓄積することができた。次に、こうした文献調査を基礎として、実験室実験や、これに関連する質問票調査といった実証的な研究の準備に着手した。また、こうした実証的な研究の一部を実施し、現段階において有益なデータを入手することができた。このように、文献調査の内容を拡大し豊富な知見を蓄積することができた点、および、実証的な研究の準備に着手するだけでなく、その一部について先行的に実施できた点から、本研究課題については、おおむね順調に進展していると判断することができる。 以上のような研究の進展に沿って、平成24年度では、コントロール・システムの設計と利用にかかわる研究成果を国内雑誌において発表している。これに加えて、組織間コントロール・システムにかかわる海外の研究者との継続した交流による成果の一部が、研究期間の最終年度にあたる平成25年度以降において、管理会計に関連する海外の査読付き研究雑誌(Management Accounting Research、およびJournal of Accounting and Organizational Change)に掲載される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、研究期間の最終年度にあたる年度であることから、これまでの研究成果を整理するとともに、研究目標の最終的な達成に向けて、これまで十分に着手してこなかった課題に取り組むことを計画している。具体的には、現段階においてすでに入手しているデータ、および、研究課題の目標達成にとって有益であると考えられるデータを統計的に分析し、組織間におけるコントロール・システムの設計や利用と取引関連要因(組織間における信頼を含む)について、①過去の実証研究において指摘される関係性が見受けられるのかどうか、②そうした関連性が見受けられるとすれば、それはどのような理由からなのか、および、③事前に想定していない関連性が見受けられるとするならば、それはどのような理由からなのかなどについて、より詳細に検討する予定である。次に、実験室実験などを通じて、組織間におけるコントロール・システムの設計や利用にかかわるデータを収集する予定である。さらに、これまでの研究課題に対する一連の取り組みから生じる成果を、研究会や学会において報告することを計画している。こうした活動を通じて、来年度において研究課題の目標が達成できると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度にあたる平成25年度では、会計情報と組織間の利益獲得、信頼形成との関連性を実証的に解明するために、これまで収集したデータ、および、研究課題の目標達成にとって有益であると考えられるデータを分析する予定である。また、実証的な研究にかかわるデータ収集については、実験室実験などを通じて、組織間におけるコントロール・システムの設計や利用にかかわるデーターを獲得することや、質問票調査の協力企業へ報告書を送付することなどを計画している。さらに、これまでの活動をふまえた研究成果を、研究会や学会などで報告することを予定している。こうした一連の取り組みから、統計ソフト購入、文献購入、データ整理にかかわる物品費、研究会や学会での報告などにかかわる旅費、調査報告書の作成や郵送などにかかわる物品費や通信費、実験の補助や資料整理などにかかわる謝金などが発生すると予想される。 また、組織間におけるコントロール・システムの設計・利用は、国内だけでなく国外においても管理会計の重要な研究課題の一つとして認識されていることや、同様の問題意識を持つ研究者が国内外に存在することから、研究課題での成果をよりよくするために、国内や国外の研究者と継続的に意見交換することを予定している。これに伴い、国内出張や国外出張にかかわる旅費が比較的多額に発生すると予想される。そのため、次年度繰越金(71,310円)は、これに充てることを計画している。
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