研究課題/領域番号 |
23730459
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
新井 康平 甲南大学, マネジメント創造学部, 講師 (30550313)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 会計的知識 / 実験室実験 / システマティックレビュー |
研究概要 |
会計的知識の内容や機能の探求を行うため,4年計画の1年目にあたる本年は,文献レビューおよび予備的な実験室実験を行った。文献レビューは,通常の概念整理のためのレビューだけでなく,経営学全般の中で会計学がどのように扱われているのかを探求するためのシステマティックレビューを行っている。この文脈でのシステマティックレビューとは,経営学の一般的な教科書における会計用語を抽出・整理し,経営学の文脈でどのような会計的知識が必要とされているのかを整理することである。具体的には,過去3年以内に出版された経営学の教科書の索引をテキスト化し,会計用語の抽出や分類を行った。その結果,会計用語については,ファイナンスやコーポレートガバナンスの文脈で説明が必要とされているということが明らかとなった。予備的な実験室実験は,甲南大学マネジメント創造学部の学部生を対象に,ある財務数字を理解するうえで会計的知識がどのように影響するのかを明らかにするために行われた。具体的にこの実験は,被験者には評価書の立場にたってもらい実施された。それは,4種類の財務報告書を提示し,実質的には同内容であるにもかかわらず,費用表記か利益表記か,あるいは補助となる定性的情報の有無といった要因がボーナス配分に影響するかどうかを実証するためのものである。予備的実験の結果は,「黒字・赤字」といった一般で用いられる会計用語を含めたほうが解釈が容易になる点,そして「有利差異・不利差異」といった難解な会計用語を含めた場合は会計知識の大小が解釈に影響することを確認した。これらの作業から,会計知識の内容として最も基本的な「用語の理解」というものが存在し,意思決定に影響することが示されたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,文献レビューおよび実験室実験のデザインまで終了することが出来た。なお,今後の予定は本格的な実験およびその結果の中間とりまとめとなるが,そこまでの進捗はなかった。結局,予定通りの進捗であったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果については,中間的な成果であるにもかかわらず,論文などに取りまとめることが出来るものが複数あったといえる。そこで,今後は予定外ではあるが,ある程度中間成果物の学会報告や出版などを行い,最終成果物の研究精度を向上させるためのインプットを行うことを想定している。それ以外については,研究計画書通りに進める予定となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
世界での会計的知識基盤と我が国における会計的知識基盤を比較検討するために,大量の洋書の購入を予定している。また,会計の専門家といわれる人々の知識構造を探求するための探索的インタビューを行うための旅費の支出を予定している。さらには,テキスト分析のためのPC環境の整備のための物品費の支出も予定されている。
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