本研究は、異なる複数のエスニック・マイノリティ集団間の連帯に基づく集合的行為に分析の照準を合わせ、集団間の関係形成プロセスを考察した。特に、本研究が焦点を置いたのは、異なる複数の人種・エスニック集団間の関係構築に基づく草の根レベルでの秩序形成である。フィールドを合衆国ロサンゼルスとし、複数の集団間の集合的行為の事例として、1、日系コミュニティと韓国系、また、研究の進捗状況のなかで、2、日系コミュニティとムスリム系アメリカ人コミュニティ間の関係構築の試みを事例として追加した。 まず1、の事例では、両集団が同一地域を共有するながで、いかに草の根レベルでの秩序形成を実現・維持しようとしているのか、という点から、コミュニティの自治に関するミーティングにて複数回にわたり、参与観察を行った。そのうえで、集団間の協議の機会形成を担うアクターたち(日系人居住者、ビジネス・オーナー、韓国系ビジネス・オーナー、行政担当者)へのインタビューを重ね、分離を回避した共生の試みに関して、アクターたちの問題認識の枠組みを明らかにした。 2、の事例では、両集団間が象徴的に共有する行為と、集団間の差異を認めあう行為の両方から、両集団間の関係構築のための活動を展開する複数の組織メンバー、ならび活動参加者へのインタビュー、および活動への参与観察を行った。その結果、両集団による活動に対する意味付けの相違を浮き彫りにすることができたばかりか、その相違を考察した結果、両者間が共同活動を展開・維持していくうえでの誘因となり続けているという点を明らかにした。この成果は、国際シンポジウムで報告を行い、他の研究者から、今後の研究展開に有益なフィードバックを得た。
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