研究課題
「社会的入院」と一口に言っても、患者側の都合による長期入院や退院の遅延にとどまるものではない。現在、注目されているのは、本来的には退院(早期離床、早期歩行)が可能であるにもかかわらず、医療・介護提供体制の事情により、不適切な入院・転院が行われ、廃用症候群や認知症の進行など、高齢者のQOLを低下させているケースであり、社会的入院の理由や実態はさまざまである。そこで、第一に、先行文献の包括的なレビューを行い、今後の調査研究の指針となる社会的入院の類型的把握を行った。さらに、社会的入院は、地域ごとに大きく異なる特性を有しており、文献レビューに基づく概念設定だけでは不十分であるため、23年度後半から現場でのインタビュー調査を行い、山形県における実態に沿った概念規定を行った(山形県の社会的入院に関する先行研究は行われていない)。現場でのインタビュー調査は、医療型療養病床を有する病院(25病院)、介護型療養病床を有する病院・診療所(12施設)を中心に、その施設長や医療ソーシャルワーカー、退院調整担当看護師等に対して行った。具体的には、先行研究で指摘されるような患者サイドの都合(介護力不足、介護忌避)はもとより、病院のマンパワー不足による入院の長期化等の問題点等の実態についても探った。あわせて、県内の自治体役場、病院、保健所を対象に医療、人口、経済、介護・福祉にかかわる基礎資料の収集、整理にも当たった。医療統計については、申請者が実施した山形県内病院調査の結果も活用した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の前半では、山形県における社会的入院の実態を把握するため、先行文献のレビューおよび現場でのインタビュー調査を通じ、社会的入院の類型的把握を行ったうえで、県下の医療施設、介護保険施設を対象とした質問紙調査を行い、社会的入院の実態を定量的に把握することになっている。24年度は、社会的入院の定量的な把握に向けての類型的把握を行う計画であったが、そのためのフィールドワークも概ね順調に進み、25年度の質問紙調査の設計につなげることができている。
平成23年度後半から実施する前述のインタビュー調査を平成24年度前半まで行う。そして、以上の文献レビューおよびインタビュー調査、および申請者の行った病院調査の結果に基づき、病院・介護保険施設に対する質問紙調査を実施し、山形県における類型別の社会的入院患者数の推計を行う。調査対象は、山形県内の一般病院(49)、介護型療養病床を有する病院・診療所(12)、介護老人福祉施設(82)、介護老人保健施設(42)であり、郵送送付、郵送回収により行う。
(1)文献レビューのために、医療・福祉社会学関連図書(15冊×3.0千円)、医療・介護・人口・経済統計資料(10冊×5.0千円)。(2)資料収集(各自治体役場、病院、保健所)として、60千円。(3)現地調査(病院、介護保険施設:40か所)として、180千円。(4)調査票印刷・発送(2名×1日)、調査協力(40名)として、96千円。(5)その他、上記にかかる費用として、資料コピー、宅配便、テープ起こし、調査票印刷、切手が、1044千円。
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