入院中心の医療から在宅医療への転換が求められるようになって久しい。実際に、急性期医療機関においても、入院初期からの退院支援が行われ、在院日数短縮につながっている。しかしながら、実際に、患者や家族と、主治医や病棟看護師、退院支援担当職員のあいだでどのようなコミュニケーションがなされ、当初の患者・家族の意向が実現ないし変容し、退院に至っているのかは十分に検証されていない。そこで、最終年度は、県内でとくに退院支援が活発になされ、平均在院日数短縮を実現している山形県内病院を対象として、その課題の一端を明らかにした。その際には、在宅復帰(=在院日数短縮)の手段にとどまらない患者のエンパワメントとしての退院支援の可能性に焦点を当てた。
エンパワメントについての結果をみると、エンパワメントに影響する因子として、「配偶者以外の同居家族の存在」と「要介護認定を受けた同居家族」がマイナス因子として析出された。他方で、疾患や入院区分(緊急、予定)、年齢、性別、居住地、本人の要介護度などの個人属性による有意な差は認められなかった。
「配偶者以外の同居家族の存在」については、退院支援において家族が前面に出たり窓口になったりすることで、患者本人が自らの生活を主体的に考える機会が逸失されている可能性、「要介護認定を受けた同居家族」については、退院支援において患者本人の介護状態は十分に考えられているが、患者が在宅復帰後、同居家族に介護する必要がある環境にある場合に、エンパワメントが不十分である可能性が示唆された。
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