研究課題/領域番号 |
23730469
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
五十嵐 泰正 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (80451673)
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キーワード | 国際移動 / コミュニティ / 都市 |
研究概要 |
調査対象地の一つである千葉県柏市では、放射能のホットスポットとなったことで、「土地に縛り付けられた」農業者と「移動者」である郊外住民との間に、まさに現代における移動性(モビリティ)の格差から生じるコミュニティの分断の拡大が懸念された。そうした中で、平成23年度より継続して消費者・農業者・飲食店・流通業者で協働的に問題解決を図る「安全・安心の柏産柏消」円卓会議に深く関わり、そこにおける市民的な熟議の過程を、『みんなで決めた「安心」のかたち』として出版した。このプロジェクトおよび同書に関連して、『シノドス』『ソトコト』他での各種メディアへの寄稿・出演や、学会・市民向け双方合わせて多数の講演活動を行った。これらは、本研究課題に即した純粋な学術報告という性格のものではなかったが、社会学がなせる社会貢献の新たなあり方を示すものとしても、大きな反響を呼んだ。 また、台東区上野地区では、上野商店街連合会・アメ横商店街における聞き取り・参与観察を継続するとともに、アメ横商店街の顧客層に対して、消費行動の中から都市の流動性と継続性を浮かび上がらせるネット委託の質問紙調査を実施した。 また、中国・大連市においては、現地の人材派遣会社等の協力のもと、現地採用で働く日本人の若者たちの調査を継続的に行い、加えて日本向け食品の生産・貿易を行う食品商社の聞き取り調査を行い、食品選択を通した移動性と地域性の違いを新たな視点から検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、東日本大震災の影響を強く受けた平成24年度は、調査対象地の農業問題など計画当初は予想しなかった領域に関わり、調査事例の一部をフレキシブルに変更したが、それが結果として、移動と定着の今日的な意味の考察という本研究課題の本旨を深めていくうえで、かえって有意義であったと評価している。また、柏における実践的調査とその社会的フィードバックを通して、より激甚な状況に置かれている福島県の消費者・生産者の状況を視察し、情報交換を行う機会が増え、それも申請者の問題関心の深化に重要な役割を果たしている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、アメ横をはじめとした上野地区での調査はおおむね切り上げ、柏市及び福島県(いわき市等)においての農業復興を中心とした実践的調査に注力しながら、それらの具体的な地域を起点とした移動と定着をめぐる理論的な考察は、本年度も継続して行ってゆく。今年度は本研究助成の最終年度に当たるので、学会やシンポジウムでの報告を積極的に行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、学会報告での国内出張、および昨年度までの研究で、現代の移動を考える際に重要なポイントであると認識を深めた「食品選択」を調査するために、海外出張を計画しているので、旅費を30万円計上している。今年度使用額のうち、134,521円は、昨年度平成24年3月21日~25日の中国・大連市への出張に充当したものである。また、次年度使用額のうち123,524円は、平成25年2月28日の首都大学東京への出張、3月1日のNPO法人POSSEへの出張、3月9~10日のいわき市への出張、および3月11~14日の中国・大連市への海外出張で、旅費として支出済みである。
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