研究課題/領域番号 |
23730470
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
岸 保行 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50454088)
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キーワード | 中国人ワーカー / 職業観意識 / 日本企業 / 中国 / 国際情報交換 |
研究概要 |
H24年度は、日系ものづくり工場で働く中国人ワーカーの職業観意識に関する調査を実施する予定であった。前年度から質問票調査、調査協力者、インフォーマントの選定に関する準備を進めてきたが、夏に勃発した日中間の尖閣諸島領有権をめぐる政治的軋轢のために、調査を実施することが困難となってしまった。 そのため、H24年度は、国内外の研究会に参加し、本研究テーマに関する発表をし、それに対するコメントをもらったり、中国に進出している(または進出を予定している)大企業・中小企業の国内拠点を訪問し、中国での人材活用における課題と展望に関する聞き取り調査をおこなってきた。その結果、昨今では、中小企業の中国展開に際して、現地での人材マネジメントの問題が大きく生じてきていることがみえてきた。中小企業では、国内需要の縮小さらには取引先の中国展開にともない、中国での操業を迫られている状況下におかれているものの、実際に中国での人材マネジメントに対する不安の声が数多く聞かれた。 H24年度の研究活動を通じて、研究会と中国進出企業または進出予定企業での聞き取り調査を踏まえて、前年度に作成していた質問票の改訂をおこなった。具体的には、日中間の政治的軋轢がワーカーの職業選択にどのような影響を与えるかを念頭において、改めて質問項目と質問文の見直しをおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24度は、日系ものづくり工場で働く中国人ワーカーの職業観意識に関する調査を実施する予定であったが、夏に発生した尖閣諸島をめぐる日中間の政治的軋轢により、調査を実施することが困難となってしまった。 実際に、昨夏の尖閣諸島をめぐる政治的軋轢の勃発により、中国の各地で反日デモが発生してしまい、調査をお願いしていた企業からも「今はワーカーを刺激したくない」との連絡を受けた。 そのため、H24年度に予定していた調査は、来年度に繰り越し実施しなければいけなくなってしまった。 調査の実施は次年度へと繰り越しとなったものの、その代わりに、今年度は、国内外の研究会に参加し、本研究テーマに関する発表をし、それに対するコメントをもらったり、中国に進出している(または進出を予定している)大企業・中小企業の国内拠点を訪問し、中国での人材活用における課題と展望に関する聞き取り調査をおこなってきた。その結果、昨今では、中小企業の中国展開に際して、現地での人材マネジメントの問題が大きく生じてきているという貴重な知見が得られた。中小企業では、国内需要の縮小さらには取引先の中国展開にともない、中国での操業を迫られている状況下におかれているものの、実際に中国での人材マネジメントに対する不安の声が数多く聞かれた。 これらの研究活動を通じて、H23年度に作成していた質問票の改訂をおこなった。具体的には、日中間の政治的軋轢がワーカーの職業選択にどのような影響を与えるかを念頭において、改めて質問項目と質問文の見直しをおこない、次年度の調査のための準備を強化した。 調査体制に関しては、既に大連理工大学の方明豪講師から調査協力の快諾を頂いており、調査票の共有も進んでいるため、日中間の政治情勢に大きな問題が生じない限り、H25年度は調査を実施することが可能となると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、中国に進出日系ものづくり工場で働く中国人ワーカーの職業観意識を探るための調査を予定していたが、夏に発生した尖閣諸島の領有権をめぐる日中間の政治的軋轢のために、調査の断念を余儀なくされた。そのため、調査を実施する代わりに、中国に進出している、または進出を予定している企業の国内拠点を訪問し、中国でのワーカーのマネジメントの問題と展望に関して聞き取りをおこなった。 そのため、H25年度の研究費のおよそ半分の額を次年度に繰り越している。次年度は、H25年度に繰り越したおよそ65万円と、H25年度の研究費であるおよそ60万円の合計125万円の大部分を用いて、中国に進出した日系ものづくり工場で働く中国人ワーカーに関する調査を実施する予定である。既に、調査協力者である大連理工大学の方明豪講師とは、連絡を密にとっており、今夏に日系ものづくり企業で働く中国人ワーカーに対する質問票調査に対する全面的な協力の快諾をいただいており、既に調査に関する打ち合わせをおこなっている。 H25年度は、本プロジェクトの最終年度でもあるため、H25年度の研究費から、最終報告書を作成するための経費も捻出する予定である。H25年度に調査もおこなうため、報告書に割く研究費の額は当初に予定していた額より少なくなってしまう可能性があるが、今後、中国に進出する中小企業の中国でのワーカーマの人材ネジメントの指針となる報告書を作成するために、H25年度の研究費を用いて最終報告書も作成する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25度は、H23年度に作成し、今年度改訂した質問票調査を基に、日系ものづくり工場で働く中国人ワーカーの職業観意識に関する調査を実施する予定である。調査に当たっては、大連理工大学・方明豪講師にご協力いただき、大連とその周辺に進出した日本企業で働く中国人ワーカーへ質問票を配布する予定である。回収した質問票をもとに、中国人ワーカーの職業意識に関するデータ分析をおこない、同時に、フォローアップとして何名かの中国人ワーカーから聞き取り調査も実施する予定である。 H25年度は、本プロジェクトの最終年度であるため、データ分析結果をもとに、最終報告書を作成する。同時に、ご協力いただいた企業への調査結果の報告もおこなう予定である。最終的には、回収した調査票のデータ分析結果を公表し、今後中国に進出予定の中小企業の中国人ワーカーの人材マネジメントに役立ててもらう方向性を考えている。 そのため、H25年度の研究費の使用としては、主として調査に関わる費用を捻出することになる。調査票の印刷費や送付に関わる費用、さらには、調査協力者である大連理工大学・方明豪講師に対する謝金、また質問票調査の整理とデータ入力のための補助者に対する謝金など質問票調査を実施するために必要となる経費を研究費から捻出する。同時に、調査のための中国への渡航費・滞在費も研究費から捻出することになる。 さらに、H25年度は本調査プロジェクトの最終年度となるため、最終報告書の作成のための費用も研究費から捻出することになる。報告書の製本費、さらには企業への送付費用、また協力企業への報告のための旅費などを研究費から捻出する予定である。
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