本研究では,まず,R.K.マートンを中心とするコロンビア大学応用社会調査研究所のグループが1940年代に実施した計画的コミュニティ研究の概要を明らかにした。そして,1960年代以降の英国で形成されたハウジングの社会学が,都市の希少資源の配分をめぐる政治と,日常生活の物質文化を構成するさまざまな仕事の実践という二つの焦点をもっていたことが分かった。本研究を通じて,ハウジングの社会学の展開を,社会心理学/政治経済学/エスノグラフィという方法の創出過程として把握することができた。それは,ハウジングが,既存の理論や調査手法の実験場から,固有の意義をもった対象として再発見されてゆく過程でもある。
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