本研究では主としてベトナム南部のメコンデルタの農村に注目し、1970年代半ばから現代に至るまでの、住民生活と環境利用の変化を明らかにした。 (1)調査地では、1990年代半ばの水道敷設を契機にそれまでの水路や自宅庭池の多様な利用形態が変化し、農業用水路としての機能に縮減していった。また農業の近代化によって農薬等の利用が増え、漁撈や遊びの場としての機能が失われた。 (2)水域の環境変化に対して多くの住民が懸念を持っていることがわかったが、他方でそれに対する具体的かつ集合的な行動は見られない。ベトナム南部のコミュニティ組織の脆弱さと、人口に対する自然資源の豊富さが阻害要因となっていると考えられる。
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