本年度は研究機関の最終年度となるため、研究全体のまとめを行った。したがって、以下の文章は、本年度も含めた全体的な記述となる。本研究では、社会資源のなかでも特にセルフヘルプ・グループの活動に着目し、1)関連する研究動向の整理、2)遺族支援活動の動向調査、3)遺族グループの中長期的視点からの事例研究の3つの作業を実施した。1)については、本研究の調査対象と重なるセルフヘルプ・グループに対する国内外の社会学分野における研究関心として、複数の現代的意義や検討課題が議論されていることを確認した。2)については、主に国内の遺族支援グループの活動動向に関する情報を整理し、既存のセルフヘルプ・グループに対する議論と同様に、相互支援活動と社会的情報発信活動(啓発活動や政策形成への働きかけ)の2つの方向への活動展開がみられること、そして、テーマによっては行政機関や医療機関等と連携する動きもみられることを確認した。3)については、全研究期間を通して、特定の遺族グループに対する継続的な参与観察調査を実施し、集団の変遷過程と活動内容の変化を分析した。本事例の特徴としては、①小規模集団であるがゆえに臨機応変に活動展開が可能である一方で、組織としては不安定であること、②特定の行政機関や医療機関との結びつきを回避しているが、それなりに連携関係を形成していること、③中心的メンバーの考え方がグループの運営に強く反映されやすいこと、④社会的情報発信活動よりも相互支援活動が集団維持にとっては基盤となっていること等を挙げることができる。家族政策や社会政策への影響という点についてみると、活動を通した働きかけは社会的なインパクトをもつと考えられるし、その意義は大きいが、それは地道な相互支援活動があるからこそ可能になっているとも考えられる。総じて、相互支援の活動基盤に対する社会的支援の重要性を指摘することができる。
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