本研究では、戦後補償法制度および靖国神社、広島県動員学徒等犠牲者の会、被団協運動という三つの「記憶の場」における戦死者追悼を対象に、国民創出のメカニズムを考察した。日本における戦後補償制度は国家による援護措置としての性格が強く、とりわけ戦争被害受忍論を通して、戦争被害者を「国家存続のための犠牲」として国民化しつつ、国民を「自発的に犠牲となった主体」として取り込んできた。しかし、それは国家による一方的な働きかけによって可能となったのではなく、遺族をはじめとする戦争被害者が戦死者追悼を通して受け入れてきたともいえるのである。
|