仙台の保育園で「高度経済成長期」以降の子どもの様子や保育園の役割の変容に関するインタヴュー調査を実施するとともに、図書館で生活記録等関係資料の収集を行った。仙台市では、戦間期に東京から疎開してきた人が多く、東京の文化が流入したと考えられる。東北子ども文化研究会等が活発に活動し、言論統制が厳しい中、子どもの教育の質的向上に寄与した。この流れは戦後も続いていく。仙台市では「高度経済成長期」にかけて全体的には女性の「主婦化」が高まっていくが、労働に従事せざるを得ない母親も多く、一方、東北の農村では父親が出稼ぎに行かざるを得ず、母子のみで生活する家庭が増え、生活改善グループを中心に、保育所の設置要望が高まっていく。 育児支援活動のボランティアグループ主催による子育てネットワークや幼稚園を中心としたネットワークの形成の在り方について調査・分析を行い、子育てネットワークの形成過程に関する論文を出版した。さらに、栃木県の氏家ミュージアムにおいて「高度経済成長期」の女性団体の活動に関する講演を行い、研究成果を一般の方々に広めた。ジェンダー関係や社会学関係の学会や研究会に参加し、ジェンダーや社会学諸領域の研究者との情報交換を行った。 著書を刊行し、日本教育社会学会誌および日本家庭科教育学会誌において書評が掲載され、関係する学問領域に知的影響を与えた。さらに、朝日新聞にも広告が掲載されるなど、一般の人々へも著書の存在がアピールされた。この実績から、2015年度国立大学法人熊本大学研究業績表彰を受けた。
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